「トレキング」についても、詳しく教えてください。
脇坂:「トレキング」は、平岩先生と作業療法士で神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部リハビリテーション学科学科長を務める笹田哲先生の協力を得て、発達性協調運動障害を抱える子ども向けに開発しました。発達性協調運動障害とは、いわゆる「極端に不器用」と言われる状態で、手と手、目と手など複数の体の部位を連動させることが難しい状態を指します。この障害を抱える子は、授業中に姿勢を維持することが難しかったり、片足で立てず靴を履くことに苦労したりと、日常生活の中で困難さを感じる機会も多いため、反復トレーニングを行うことで状態の改善を促すことが欠かせないのです。
こうした問題を解決に導くために開発したものが「トレキング」です。モーションセンサーや複数のディスプレイを利用したゲームになっており、ディスプレイから出てくる生き物などのアニメーションを足でタッチしたり、バランスボールに座りながら画面上の泡をタッチしたりすることなど、ゲームの世界に没入しながら体の動かし方を訓練することができます。このゲームを行うためのハードウェアが非常に大きいため、主には発達障害児が障害特性に合わせて様々な支援や訓練を受けられる療育施設で活用することを想定しています。
トレキングでトレーニングする様子。動く物体を足でタッチする行為を通じて、身体の部位を連動させる感覚を身につける
「トレキング」も含め、貴社で開発したICT教材の特徴は、どのような点にあるのでしょうか?
脇坂:一番の特徴は、子どもが楽しみながら、自分の苦手な領域の反復トレーニングを行える点です。例えば、ディスレクシアの子どもの場合、読む力の習得を目指し、来る日も来る日も文字を読む練習の繰り返しを求められることがあります。しかし、単純作業のような訓練を繰り返すことは大人でも辛いですし、失敗が続くと、その子の自己肯定感は下がってしまいます。現在のトレーニングのやり方には、課題も多いのです。
ゲーム制作の知見と技術を持っている当社は、それらを生かして、ゲームの中にトレーニングを組み込みました。開発に当たって、平岩先生と笹田先生にも沢山の意見や指導をいただいております。楽しいゲームだけれど、療育としての機能も果たせる。そのような教育ソフトを開発することができたと自負しています。