上田さんがICT端末を活用されはじめたのは、いつ頃のことだったのでしょうか?
上田:最初にパソコンを使いはじめたのは中学生の頃で、盲学校の授業がきっかけでした。ただ、盲学校では教科書も試験も点字を使うので、パソコンを使わなくても不便はありませんでした。高校生になると点字図書をダウンロードできるサービスを知り、本が読みたいがために、パソコンを使うようになりました。 本格的にパソコンが必要になったのは、音楽大学に入ってからのことです。個人レッスンもありましたが、一般の学生と一緒に受ける講義がほとんどで、先生が配るプリントは点字ではありません。そこで、パソコンを使って、プリント出力ではなくデータをメールで送ってもらい、文字を音声変換で理解したり、プリント出力されているものをスキャンで画像データにして、さらにOCRソフトにかけて音声変換したりと、日常的に活用するようになりました。
そうした経験を通して、ICTに詳しくなられたのですね。
上田:必要に迫られてではありますが、パソコンがなければ本当に大変だったと思います。自分なりに工夫しながらICTの知識を深めたことで、日本点字図書館で働きはじめる前は、パソコン教室の講師を任せていただく機会もいただき、教える仕事のやりがいを感じることもできました。
視覚障害者の方がパソコンを操作するときに、ハードルになることは何でしょうか?
上田:まず、マウスがどこを指しているか分からないので、マウスの操作ができません。そのため、キーボードのみの操作になりますので、ショートカットキーをフル活用できるようになることが、ひとつの目標になります。使うのは一般のパソコンですが、視覚障害者に教える項目が、一般的なパソコン教室とは異なります。