Ontennaを作ろうと思われたきっかけを伺えますか?
本多:きっかけは大学1年生のとき、耳が不自由な方と出会ったことです。それから手話の勉強を始め、手話通訳のボランティアや手話サークル、NPO法人の立ち上げなど、さまざまな活動を行ってきました。 私が最初に出会った方は神経に障がいがあって、補聴器も人工内耳も使えない方でした。生まれつき耳が聞こえないから、電話の音もアラーム音も聞こえない、子供の泣き声もわからない。 私はもともとデザインやテクノロジーの勉強をしていたので、これらを使って彼らに音を伝えたいという思いで研究を始めました。この研究をしたいという思いで富士通に入社し、今年やっと製品化しました。
触覚によるフィードバックは、耳の不自由な方々にどのような変化をもたらすのでしょうか?
本多:たとえば、Ontennaを導入された聾学校では、普段手話しか使わない生徒が声を出そうとするようになったそうです。それは、Ontennaを使ったことで、自分の声が振動や光に変換されることにより、「声を出せているかどうか」が分かるようになり、声を出すことに興味を持ったからだそうです。また、太鼓を叩くときも、強く叩くと強く、弱ければ弱くOntennaが振動するので、音の強弱を感じることができます。このように、これまでに得られなかった感覚を理解できるようになるというのは、大きな変化だと思います。
振動だけではなく光を発するようにしたのは、なぜでしょうか?
本多:振動を使ったフィードバックが伝わっていても、周りの人からすると本当に音が届いているのかどうか判断できません。そのため、視覚的に分かるようにする必要があると考え、光を発する機能も搭載しました。
Ontennaを使った方からの反響はありますか?
本多:全国の聾学校で使ってもらっているのですが、音に興味がなかった子供たちが、興味を持つようになったという声は聞いています。 またOntennaを使ってタップダンスをされた方にも「タップ音を感じられた」とおっしゃっていただきました。「光がたくさんあるとライブ会場みたいになって一体感が生まれる。とても面白かった」という声もいただいています。
これは健聴者が使っても楽しそうですね。
本多:そうですね。普段の情報に、振動や光などの感覚を付加することで、より臨場感や没入観を与えます。イメージとしては、4DXの映画とか、ゲームのコントローラーの振動が近いかもしれません。
クリップ型のOntennaは髪や洋服に気軽に装着することができる