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アクセシブルなプロダクトデザインで“非合理”をなくしたい。労務システム「SmartHR」の取り組み

2 技術で可能なことは技術で可能にする社会にしたい

企業のWebサイトやシステムのデザインにおいて、アクセシビリティの配慮がまだ進んでいない現状にあると思います。それについて、長年アクセシビリティに取り組んでこられたお二人はどのように感じていますか?

桝田:特に日本では、まだまだ我々のような個人の開発者の善意でアクセシビリティに取り組むケースが多く、企業として目指しているケースは少ないかもしれません。理由としては、やはり経営的には小さなリスクであることがあげられると考えています。たとえば、セキュリティ対策が甘いことでインシデントが起こった場合、法的に罰せられたり損害賠償請求の対象になったりと、重大な経営リスクを想定できます。そのリスクを回避するためにセキュリティに投資するわけです。ところが、アクセシビリティに配慮していないことによる不利益はセキュリティほど大きく認知されていません。

諸外国でアクセシビリティが進んでいるように見えるのは、法律による罰則があったり、行政が導入するシステムにはアクセシビリティの要件を満たしていることを求めているからです。特にアメリカではコンプライアンスの観点でアクセシビリティが進んでいる状況に見えます。かたや日本は「あるに越したことはない」程度に留まっているので、意欲のある開発者だけが善意でアクセシビリティを考えながら開発しているような状態だと思います。

辻:「誰でも使えるシステム/ツール」という謳い文句は、ここ10年ほどで急激に増えたように思います。ただ、「私のような全盲のユーザーは、“誰でも”の“誰”に含まれていないのかな?」と感じる場面は少なくありません。本当の意味で誰でも使えるものをちゃんと作れば、業務効率化の向上にもつながるはずですし、全従業員が同じように働ける環境を実現できるはずです。

そして、私はかねてより「障害者には優しくしましょう」という考えに違和感を抱いています。障害を持つ従業員は、同僚が手助けしてあげて当たり前という状態ではなく、同じシステムやツールを活用して、皆と同じ条件で業務を遂行できることが理想です。先ほどお話しした私の入社時の実体験もしかりで、現場の人が運用でカバーしていることは少なくないと思います。そうではなく、「技術で可能なことは技術で可能にし、運用でカバーしない社会」を作りたいと考えています。それが本当の意味で多様性の実現だと思うのです。

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