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安全確認への意識を高めることができれば、これまでよりも歩行に対して気持ちのゆとりを持てそうです。
千野:視覚障害者の方は、非常に緊張感を持って歩行しています。ロービジョンの方であれば、慣れた道であっても電柱を数えながら歩くなど、とにかく進路を間違わないことを優先して歩いているんです。しかし、人間の注意力や集中力には限りがあります。たとえば、集中してテレビを観ているときに話しかけられると、その話にしっかり耳を傾けられませんよね。それと同じように、歩行時に進路を間違わないように集中すればするほど、他のことに注意を払いづらくなります。
安全確認はもちろんのこと、散歩みたいに歩くことを楽しむためには、特別に意識しなくてもナビゲーションを任せられる、あしらせが担う役割は大きいと考えています。たとえば、「400m先を左折する」場合、左折する場所までの距離に応じて左足の振動モニターが振動し、近づけば近づくほど振動の間隔が短くなる、というように振動でナビゲーションできれば、心理的な負担をかなり減らせると思います。
現状、スマートフォンとの通信をもとにしたナビゲーションを実現されているようですが、GPSを直接足元のセンサと連携させることは難しいのでしょうか?
千野:開発当初は、そのような案もありました。いわゆる「靴の中の仮想点字ブロック」のような安全サポートシステムを検討していたんです。しかし、細かい技術を詰めれば詰めるほど、センサの数を増やさなければいけなかったり、受信機を大きくしないといけなかったり、コストが高騰したりと実現にあたってのハードルが非常に高いことがわかりました。とはいえ、スマホがなくても同様のナビゲーションを実現できればそれに越したことはありませんので、将来を見据えて衛星から直接位置情報を受信できるようなシステムも同時並行で研究開発しています。