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双方向のオンライン授業に挑戦した、福岡市立今津特別支援学校の取り組み

1 ICT機器の有効活用を伝える活動を展開。 オンライン授業の仕組みづくりにも尽力

福島さんは、1990年頃からICT機器を活用した教育を推進されてきました。その背景や活動について伺えますでしょうか

福島勇さん(以下、福島):きっかけは、福岡市立今津養護学校(現、福岡市立今津特別支援学校)に赴任した際に、ある四肢の運動機能に重度な障害のある生徒Aさんとの出会いでした。その生徒は年齢相当の理解力はあるものの、発話や筆記に困難を抱えていました。そのため、有効な意思伝達手段を持ち合わせていなかったのですが、左手の動作は得意だったので、私が独自にアクセシビリティスイッチを作り、入力するだけで文字がタイプできるパソコンシステムを提供しました。

Aさんは、すぐに仕組みを理解しましたが、なかなか文章を打とうとしません。しばらくすると、「書きたいことがない」とタイプしたのです。その言葉を目にして、私は大きなショックを受けました。Aさんは、日常生活に必要な行為のほとんどに介助が必要で、受動的な生活を余儀なくされています。肢体不自由をはじめとした障害の程度が重度な人たちは、何かやろうとしても失敗ばかりするために、「どうせ、自分がやってもできない」「きっと、うまくいかない」とあきらめてしまい無気力になり受動的になっていくと言われています。

そこで、Aさんが何かを書きたくなるように、ラジカセから音楽を流したり、テレビのリモコン操作をしたり、学級新聞を作ったり、年少の子どもたち向けに物語を書いて紙芝居を作ったりと、いろいろな経験をしてもらうように工夫しました。人は自分が経験したことによって喜びを感じたり、褒められたりすることで、達成感や有用感を感じたり、認められたり、感謝されたり、依頼されたりすることによって意欲が向上すると思います。前述したような活動を通して、Aさんは「書きたいこと」を見つけ、それをアクセシビリティスイッチに入力して表出するようになっていきました。

当時は、ICT機器を福祉支援機器として活用する養護学校や教員は少ない状況でした。そのため、Aさんの学習支援にあたっては、現東京大学先端科学技術センター中邑賢龍教授が書かれた『障害者のための小さなハイテク』という書籍を参考にしました。当時、香川大学で助教授を務めておられた中邑先生に直接アドバイスをいただきながら、Aさんの学習を支援するとともに、中邑先生からの呼びかけに応じて、ICT機器の有効活用を伝える活動を始めるようになりました。

新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で、2020年3月2日から全国の学校が臨時休校になりました。今津特別支援学校は翌月4月にオンライン授業を開始されましたが、福島さんはその計画に携わられたそうですね。

福島:はい、臨時休校になり、子どもたちの学習保障のため、オンライン授業の導入を考えました。しかし、3月は年度末だったこともあり、教員も職員も多忙だったことから、年度内の実施は困難でした。そして、4月になり、新しい校長が着任してすぐ、私の方から「休校が長引く可能性があるので、子どもたちの学習保障ならびに安否確認の意味も含めたオンライン授業を実施する必要がある」と進言しました。

しかし、誰もオンライン授業を体験したことがなかったので、まずは教員向けと保護者向け講習会を提案しました。ただ、休校中に保護者に来校をお願いするのは難しいのでは、という意見がありました。そこで、まずはオンライン授業で使用予定のZoomの使い方を知ってもらうために、ICT端末でZoomに参加する方法を解説した動画を作成し、YouTubeにアップしました。その後、オンライン授業の開始が決定され、実施に向けた準備を急ピッチで行いました

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