まず、「脳にいいアプリ」を開発されようと思われたきっかけから教えていただけますか。
遠山陽介氏(以下、遠山):私の家族が認知症になったことで、初めてこの病気について考えるようになりました。本人が苦しいのはもちろんですが、大切な家族が病気によって変わっていく姿を見守る辛さ、悲しさを体験しました。このことがきっかけで、エンジニアとしての技術を活かして、ICTを使って何かできないだろうかという想いを持ち、アプリ開発を決断したかたちです。
『脳にいいアプリ』は、脳科学研究の膨大な知識を仕組み化し、脳の健康維持に有効な活動を提案するスマートフォンアプリという位置付けですが、こうした内容にしようと思われたのはなぜでしょうか?
遠山:その当時、認知症に関する情報が溢れていて、出所が定かでない情報もたくさんありました。そうした状況にも課題を感じていたので、きちんと役立つ情報を届けたいと考えました。そこで、脳科学に関してエビデンスのある研究論文をリサーチしたところ、世界最高峰の認知症研究を行っているカロリンスカ研究所の存在を知りました。研究所が有効性を示した予防法をもとに、脳に良い影響を与えるスマートフォンアプリを開発することにしました。
アプリはどのような内容になるでしょうか?
遠山:「運動」「食事」「脳刺激」「ストレス緩和」「社会参加」の5つが予防として有効だと言われています。『脳にいいアプリ』は「運動」「脳トレ」「食事」によって、5つの項目をカバーできるように、さまざまなコンテンツを組み合わせて提供しています。認知症は治療が難しい病気ですが、適切な予防をすることで発症を抑制することができます。このアプリを使う事で脳を活性化し、脳の健康を維持させることで認知症の予防につながります。
具体的には、どのようなコンテンツが搭載されているのでしょうか?
遠山:ユーザーに実施していただくのは「運動」「食事」「脳トレ」の3つです。「運動」に関しては歩行を促すために、いくつかのコースを用意しています。たとえば、「東海道五十三次コース」や「四国お遍路コース」で、これに挑戦していただくと歩数がこのバーチャルな散歩コースへ反映されていきます。歩数に応じてコースが進み、実際に東海道を歩いているような気持ちになり、飽きずに頑張ることができます。歩数のカウントは、スマートフォンに内蔵されているカウンターと連携させ、アプリに反映しています。
「食事」は脳の健康維持に効果があるといわれている食品を画面に表示させ、摂取した食品をタップするだけで簡単に管理ができます。これにより、脳神経細胞の活性化に寄与する食品を摂る習慣化につなげます。
「脳トレ」はパズルや間違い探し、計算問題などをやりながら脳の血流を上げるというものです。脳を使うことで、脳の健康を維持し、記憶を司る海馬など、脳の萎縮しやすい部分を鍛えるプログラムになっています。
こちらは「食事」の画面。脳にいいとされる食材はすべてエビデンスがあるラインナップ