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同じ視覚障害者の立場から、目が見えない人のためのiPhone教室を提供

3 同じ境遇の自分が寄り添うことで、考え方がポジティブに変わる

生徒さんは、どのような方が多いのでしょうか。

やはり、高齢の方が多いと思います。最高齢の方は91歳の全盲のご婦人です。娘さんがiPadをプレゼントしたのですが、使用に前向きでないとのことで、まずは話をしてほしいと依頼を受けました。

目が見えない方にいきなりiPhoneやiPadを渡しても、「目が見えないのに、こんなもの使えるわけがない」と拒絶反応を示してしまう方が多いんです。そういう場合は、まずその人の好きなものや、何があれば毎日が楽しくなるか、を教えてもらうんです。

そのご婦人はクラシックが好きだということで、他のアプリをすべて取り払い、タップするとクラシック音楽が流れるショートカットだけをホーム画面に設置しました。最初は態度が頑なだったご婦人も、毎日それで音楽を聴くことでだんだん心をほぐしてくださったようで、次の訪問の際には「他には何ができるの?」と興味を抱いてくださいました。 今では書類や手紙も難なくスキャンし、読み上げソフトを使って自分で読んでしまうくらい使いこなされています。

すごい! ただでさえ高齢の方に電子機器はハードルが高いと思いますが、その方は目が見えないということを感じさせないほど活用されていますね。

もちろん、最初は「タップ」「スワイプ」などの操作挙動をわかりやすく教えるのはすごく難しかったです。そもそもスマートフォンというものに馴染みのない世代が多いので。しかし「タップ」は「自分の鼻をチョンとするくらいの強さで押して」、「スワイプ」は「鼻についたホコリをはらって」、というように伝え方を変えるだけで、意外なほどスッと動作を理解してくださるんです。

また、みなさんに共通して言えるのが、余計な先入観がないからか、吸収力は人一倍だということ。レクチャーに関して苦労したという記憶は実はそんなにありません。

井上さんは、ただ操作方法をわかりやすく教えるだけでなく、生徒さんとのコミュニケーションを重視されている印象を受けます。視覚障害者の方に操作方法を教えるにあたり、大切にされているのはどういったところでしょうか。

『MDSiサポート』は、辛い思いをすることの多い視覚障害者の方の生活を少しでも快適にしたいという思いで始めました。なので、機械の操作方法を教えてあげるだけでなく、視覚障害者としての生き方のヒントを教室を通して伝えていきたいんです。同じ視覚障害者の立場である私だからこそ、できることだと思っています。

iPhoneの操作方法以外では、具体的にどのようなアドバイスをされているのでしょうか。

例えば、障害者手帳を「お守り」として持つことを提案することがあります。「尊厳を失ってしまうように感じるから、障害者手帳を受け取りたくない」と言われる方が多いのですが、障害者手帳を所持することはあくまで権利なので、1つのメリットとして捉えてあげていいと思うんです。

権利を使うか使わないかは自分で選べばいいので、必要な時に必要な支援を享受できる状態に準備しておいて損はないです。権利を手に入れることは全く恥ずかしいことではないですし、私自身もそうすることで開けた未来もありました。

そういった当事者しか理解できない悩みに対しても、同じ視覚障害者である私であれば相談していただきやすいですし、私の体験を参考にしてもらうこともできます。

「視覚障害者用でなくても便利なアプリが沢山あります」と井上さん。写真は画面に映った物の色コードを教えてくれるアプリ
「視覚障害者用でなくても便利なアプリが沢山あります」と井上さん。
写真は画面に映った物の色コードを教えてくれるアプリ

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