既存のデータをつなげ、情報に対してリアクションができるようにすることも重要ですが、基本的にはユーザー投稿型である以上、楽しんで自立的にデータが集まるようにしていく必要があります。グルメサイトが盛り上がるのは情報を見た人からの評価があるからであり、Facebookでも「いいね」がたくさん付くとうれしいですよね。このシステムはそのうれしいをどう生かすかということを考え、一方的に情報を集めてアップするだけではなく、一人ひとりが集めたデータを楽しく交流しながら気軽に参加できる仕組みをめざしています。
具体的に集めたい情報としてはトイレや段差そしてレストラン情報などです。すごく広いレストランで車椅子でもテーブルに付けられるような造りであれば問題ないですが、ベンチシートやボックス席だと中まで入れないことや幅によっては同席できないこともあるので、事前にわかっていれば、たいへん助かります。あとは駐車場情報ですね。扉を目一杯開けないと乗り降りできない方もいらっしゃいますので、身障者用の駐車場があるかないかはとても重要です。
また、バリアフリーになっているといっても、車椅子の大きさなどによって違いがあるので、その感想や状況をアップしてもらうことで実際の体験を蓄積していきます。例えば、私が移動した経路は同じ車椅子であれば同じように行けるということになります。画像についても最近は全方位の写真が撮りやすくなっているので、一枚の写真を撮るだけで、後ろの様子や奥行き、位置関係までわかります。ストリートマップも進化していて、車椅子に取り付ければ当然路面情報も見え、これをたくさん撮ってくれればじっくりと色々な道を選ぶことができます。
バリアフリーの基準は人それぞれです。私が4.5センチメートルの段差情報を共有することで、「そんなに小さな段差で車椅子は大変なんだね」ということに気づく人が増え、何でもないことが障壁になっていることの理解につながるような二次的な力の働きにも期待しています。
このシステムはTwitterとも連携をする予定ですが、Twitterに直接つぶやくこととの違いは、情報が埋もれてしまうことなく、過去に遡って情報が引き出せるシステムだということ。「車椅子ウォーカー」でたくさんの情報を出していますが、「○○へは行けますか」といった質問を受けることが多々ある中、私よりも詳しい人の情報をインプットしておき、皆が自由に引き出せる場所の必要性を感じていました。東京に住む人が松江市に行くために松江駅前のバリアフリー情報を集めたいとき、そこに詳しい誰かが情報を提供し、その人を評価します。情報提供者が東京に行きたいときは、東京のデータがもらえるといった善意の相互交換なのです。誰の根底にも人のためになりたいという気持ちがあると思うので、楽に情報を共有し、自分が動いていること自体が誰かのためになる。動くことが喜びになること。それがいいなと思っています。
試作中のアプリ画面/イメージ