視覚に障害があるため、生活に何らかの支障をきたしている人を支援することをロービジョンケアといいます。iPadはロービジョンケアとして、大いに活用できると考え、iPadの販売元であるアップル社にセミナー開催を提案しました。
そうして2012年4月に、アップルストア銀座店で視覚障がい者むけのiPad活用セミナーを開催しました。幸い定員数を大幅に上回る人が集まり、患者さんの期待度の高さを感じました。その後、全国のアップルストアでもセミナーを開催し続けました。一年目は弱視向けのセミナーでしたが、要望も多かったため、2年目は、全盲の方向けのセミナーを開催しました。セミナーへの動員や内容ともアップル社でも評価していただき、2014年からはアップル社のスタッフたちが中心となって、アップル社公式の視覚障がい者向けのワークショップを全国のストアで展開しています。
iPadは、UI(ユーザーインターフェース)に優れていて感覚的に扱いやすい特徴を持っています。また、特別な仕様でなくても障がい者向けの支援機能が非常に充実しています。これはアメリカのバリアフリーへの認識の高さも要因だと思います。それに加え、ここ数年で障がい者向けのアプリが非常に多く登場しました。その多くのものが無料か、あるいは非常に安価に使用することが出来ます。私がiPadを使い始めたころと比べると、現在は、端末自体の機能や活用できるアプリの質が大きく向上し、より使いやすい環境になりました。ロービジョンを含めた、障がい者の方の生活向上をテクノロジーによって実現しようとする関心の高まりを感じています。今後はこうした動きがさらに加速するものと思います。