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眼科医による視覚障がい者のためのタブレット活用支援(1/5)

1 事業をはじめたきっかけ

  私は眼科医として、2012年まで東京医科大学病院の勤務医をしていました。大学病院は、その性格上、重病の患者さんが多く来られます。中には、現代の医学ではこれ以上治癒するのが難しいという場合も少なくありません。

  病院は患者さんを診断し、薬を出すなどの治療が行うのが仕事です。しかし、それ以上治る見込みの無い患者さんに、なんらかの診断名をつけても患者さんが喜ぶわけではありません。その点で、通常の医療にとどまらない、患者さんの生活をより向上できるような取り組みを行いたいと考えていたのが、スタジオギフトハンズのきっかけです。視覚障がい者の方は日々の生活に問題を抱えており、それを眼科医の立場から医療の枠を超えて支援出来ないかと考えました。

  2010年にiPadが登場し、2011年にはカメラが搭載されたiPad2が発売になりました。私はこれまで紙で行っていた治療や手術の説明の一部を、iPadで行うようになりました。言葉で説明しても理解が難しいことはよくあります。しかし、イラストや写真、動画などで説明すると非常にわかりやすく、コミュニケーションも取りやすくなります。例えば、充血と出血の違いを説明するのに、それがわかるイラストを用意しました。なかなかとっつきにくいそうした違いを、iPadを活用することで、円滑に伝えることができるようになります。

出血と充血の違いを表したイラスト。言葉ではわかりにくいことが、イラストで見ると容易に理解できる
  出血と充血の違いを表したイラスト。言葉ではわかりにくいことが、イラストで見ると容易に理解できる

  私が診療にiPadを活用していると、同僚の医師や患者さんから「その板はなんですか?」などと聞かれることが多くなりました。患者さんから、病院で購入できるのかを問われたこともあります。患者さんが、私がiPadを使用しているのを見て、興味を持ち実際に使ってみたいと思うようになったのです。

  ロービジョンの患者さんの多くが、視覚の障がいのために外出などの行動に消極的である傾向がありました。タブレット端末のように、これまでになかった新しいテクノロジーによって、今までの医療では治せなかった方のアクティビティが向上することに、大きな可能性を感じました。そこでロービジョンの方向けのiPadの活用法をレクチャーするようになりました。

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