私は、障害者スポーツの普及・拡大事業や、障害者と高齢者のネットワークづくりなど、ユニバーサルコミュニケーションを強く意識した活動をNPOとして行なっています。その中で、ある視覚障害のある水泳選手がパソコンのサポートセンターに電話をしたときのことを話してくれたことがあります。それがイーパステルを作る最初のきっかけになりました。
彼はパソコンにたいへん詳しく、メールもインターネットも、エクセルやワード、パワーポイント等のソフトも使いこなしています。ある日、パソコンに不具合があり、サポートセンターに電話したところ、電話を通して読み上げソフトの音声が聞こえたようで、オペレーターが、視覚障害者であることに気づきました。それで、とても丁寧に優しい声で、「今、周りにご家族の方がいらっしゃいますか?代わっていただけますか」と言ったそうです。自分しかいないと伝えたら、「それではご家族のいるときにおかけなおしください」といって説明してくれなかったのだそうです。ご家族はパソコンに詳しくなく、「自分が今困っていて、それで電話したのに、説明してくれないなんて」と彼は怒っていました。
そのオペレーターは、普通に説明すればよかったんです。彼は、読み上げソフトを使っていて、どこにどんなボタンがあるか、わかるのですから、「○○ボタンを押してください、そのドロップダウンメニューの中にある、上から3つめの○○という項目をクリックして・・」と、見えている人に説明するのと同様に説明すれば、彼の質問は解決したはずでした。視覚障害者には説明してもわからないだろうと思い込んでしまっているんですね。
この話を聞いたとき、こういうことがあちこちで起こっているのではないかと思いました。障害のある方や高齢の方は、そのような納得のいかない対応をされても、怒らずにあきらめて電話を切ってしまうことが少なくありません。そうしますと、コールセンター側は、対応に工夫が求められるということにすら気づかず、きちんとお客様のご要望に応えられなかったという認識すらない可能性があります。
そこで、高齢者・障害者の生の声を収集し、コミュニケーションスキルのガイドラインを作成するところから始めました。