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点字を打つように文字入力ができるスマートフォンアプリの開発(4/4)

4. スマートフォンの今後

「IPPITSU」や「スマート点字」などのスマートフォンアプリケーションが、世の中に広まることによって果たす役割というのは、いくつかあると思います。

まずは、これらのアプリケーションが、スマートフォンの世界に点字式の入口を付けたということです。視覚障がい者たちは、スマートフォンという便利な情報機器が世の中に存在することは知っています。ただしそれは、ツルツルした板の向こう側にある世界の話であって、自分たちが中に入ることができないものだと諦めていた人も多いと思うのです。それが「IPPITSU」や「スマート点字」によって、今後の可能性が広がったのではないか、と。

ただし現状では、視覚障がい者が点字方式で、Androidのスマートフォンのタッチパネルに文字を書けるようにしただけです。私の希望としては、Google社のAndroidのほかに、Apple社のiPhone、iPadのiOSなど、すべてのスマートフォンのOSで、この入力方法を実現したいですね。

点字の64符号は世界共通で、ほぼ各言語に対応しています。ですから、「IPPITSU」と「スマート点字」の入力方法に、各言語の文字を当てはめれば、基本的にその言語の入力ができるようになるはずです。つまり、世界の点字を用いる視覚障がい者だけでなく、世界の一般の人にもに普及できるものだと思うのです。

「IPPITSU」と「スマート点字」は入力ごとに音声や振動がありますから、最重度の障害である盲ろう者から、視覚障がい者、健常者までが使えるユニバーサルデザインの入力方法です。

「IPPITSU」では、そのキーやボタンに当たるソフト点字ボタンが、スマートフォンの枠の角などで分かります。また、「スマート点字」では、指が触れたところがボタンになってしまうほどの便利さです。しかし、私としてはまだ、現段階において、視覚障がい者や盲ろう者にスマートフォンを購入することを勧められません。確かに点字式入力はできるようになりましたが、実用的にはTwitterが書けるだけです。これだけでも素晴らしいのですが、実用的な観点から見ると、まだまだ不十分です。スマートフォンは高価なものですし、維持費もかかります。もうすこし開発が進んで、視覚障がい者、盲ろう者にも便利なツールになったときに、ぜひとも利用することを勧めたいと考えます。その時は、スマートフォンを既に用いている一般の方々に、その使い方を視覚障がい者、盲ろう者に教えていただきたいと思っています。

ルイ・ブライユは、点字という素晴らしい符号を発明しました。しかしそれが、世界の視覚障がい者に広まることも知らずに亡くなった、不遇な人でした。そして、この点字があまりにも優れれていたため、長い間、「視覚障がい者が指で読むもの」という固定観念のままにされてきました。

しかし、21世紀の、ICTの普及しつつある今だからこそ、点字が優れた符号体系として認識され、すべての人たちに用いてもらいたい。それが私の願いです。

一方、今のインターネットなどの通信技術は1837年のモールス電信の発明に始まったと言っても過言ではありません。そして、ルイ・ブライユによる点字の発明は、その12年前の1825年でした。遠隔で光や音が届かないところへ情報を伝える技術の発明が電信でした。一方、視覚がないために、光の文字が届かない人に情報を伝える技術が点字でした。18世紀に、期せずしてほぼ同時に始まったこの二つの技術を、現在のICT技術により、スマートに結合させることが、今の時代におけるテーマと考えます。

取材日:
2012年1月
取材協力:
社会福祉法人 桜雲会、公益社団法人日本フィランソロピー協会

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