ICT救助隊は、2010年に難病患者や重度障害者の在宅療養の支援を行っている団体「NPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会」から独立し、難病患者や重度障害者向けのコミュニケーション支援に特化した活動を行ってこられました。ICT救助隊設立2年後の2012年に取材させていただきましたが、当時から現在までの変化をどのように実感されていますか。
今井啓二さん(以下、今井):ICT救助隊は、ICT機器の操作に悩む難病患者やご家族を対象とした個別の相談と、支援者に十分な知識を持ってもらうための講座を開催しています。講座の目的は、意思伝達装置やキーボードの代わりにパソコンに文字を入力するスイッチなどの種類や特性について、難病患者や支援者に理解してもらうことです。
開講当初から講座の内容に大きな変化はありませんが、パソコンやタブレット、スマートフォンなどの端末に情報を入力するICTが大きく進化しており、講座で取り扱うICT機器はかなり変わりました。
例えば、講座をスタートした頃、難病患者が視線でマウスやキーボードを操作するICT機器は存在しませんでした。現在では、難病患者のコミュニケーションを支援するツールの主流になっています。ICTの進化するスピードが速いこともあり、ICT救助隊は常に新しいツールを探し出すことに努めています。
ノートパソコンのモニター下部に設置している機器が視線入力装置
日向野:ICT救助隊が講座を始めた頃、視線入力に関するICT機器を取り扱うメーカーは少数で、海外製品を日本向けに改造して販売する会社が1社ある程度でしたが、今では国内外の様々なメーカーから販売されています。患者さんにとって製品の選択肢が増えることになりますので、とても良い傾向だと思います。以前の視線入力装置は、視線の検出から文字の入力までに時間がかかりましたが、技術の進化でスピードアップしました。結果として、意思疎通に必要な時間を大幅に削減できるようになりました。