まずは「みんチャレ」の概要を教えてください。
渋谷恵さん(以下、渋谷):みんチャレは、「目標があるけど一人だけで頑張っていると続かない」という人に活用いただいているスマートフォンアプリです。目標でつながる5人が1組のチームになって、色々なことに取り組み、投稿画面に進捗を報告できるというものです。江戸時代の制度で、相互扶助や連帯を目的とした「五人組」を模して、現代版の五人組をイメージしていただくと理解しやすいと思います。
見ず知らずの人同士でも、チームを組めるということでしょうか。
渋谷:はい。アプリ上でつながるだけですから、基本的に本名や素性は明かしません。誰でも匿名でチームを立ち上げて、仲間を募ることができます。健康に特化したアプリではないので、勉強、ダイエット、趣味、家事など、いろいろなチームが数千以上あります。入りたいチームを選び、参加すると、1日1回習慣のために取り組んだ「証拠写真」を送らなければいけません。これがみんチャレのルールです。
習慣化にあたり、1日1回写真を送ることは、どのような効果につながるのでしょうか?
渋谷:認知行動学では、習慣化には自己反省が必要だと考えられています。たとえば、ヘルスケアアプリの場合は、勝手に歩数が計測されて、アプリを開かなくても歩数が反映されて記録の手間を省けるものもあります。しかし、みんチャレではあえて証拠写真を自分の手でアップロードするようにしていて、その証拠写真に対してコメントや、Facebookのいいねボタンのような「OK」ボタンを押せるようにしています。ちなみに、この証拠写真のことを「チャレンジ」と呼んでいて、チャレンジが仲間によってOKされることで、その日のチャレンジが成功したことになります。お互いのチャレンジにOKをし合わないと、その日のチャレンジが達成されたことにはなりません。
チームの一人ひとりがチャレンジに取り組み、さらにその投稿に対して他のメンバーがOKをする、というプロセスによって責任感が生まれ、ひいては習慣化につながるということですね。
渋谷:その通りです。誰かが投稿したものに対してOKをするという承認行為こそが、インセンティブになっています。「毎日自分1人で記録すれば同じなのでは?」と思うかもしれませんが、誰かから反応してもらえるというのは単純にうれしいものです。また、他の人も頑張っているからやろうと、継続のモチベーションを維持することができます。
さらに、みんチャレにはチャットロボットが搭載されていて、進捗に応じてキャラクターが励ましたり応援したりします。たとえば、スタートしてから一定期間過ぎると「〇〇さんは今日でチャレンジ100日達成だね」というようなメッセージを自動で送れる機能を組み込んでいます。このキャラクターの存在も、チーム全体のチャレンジを後押しします。
「人の健康に貢献する仕事をしたい」とソニーからエーテンラボに転職した渋谷さん。現在はみんチャレの普及に尽力している