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教材や教育プログラムは、どのようにして作られたのでしょうか?
中村:当時は、発達障害児を対象にした学習塾や学習支援の事例がほぼありませんでした。そこで発達障害児の支援団体の方々に協力してもらい、まず、子どもたちのデータを解析することからはじめました。たとえば、勉強に取り組んでいるときの集中力の持続時間について、5年ほどかけて100人から1000人単位で測定し、データを解析したところ集中力は5分がピークで、6分以降は急速に下降することがわかりました。
そこで、ひとつにまとまった教材ではなく、1枚5分で終わるようなプリント形式の教材を用意し、生徒の能力にあわせたプリントを渡して問題を問いてもらう方法を導入しました。スモールステップで理解を高めていくことを狙ったかたちです。
私は、もともと大学在学中に人工知能のITベンチャーに所属していたこともあり、独自に人工知能を開発して発達障害児の学習データを総合的に分析することにしました。たとえば、1か月に1回のペースで問題の中身を変えて、どこが間違いやすいのかをデータとして蓄積し、テキストの改良に活用するようにしました。教材と人工知能を組み合わせた学習支援のかたちを「Iシステム」と呼んでおり、現在までに利用者数は2万人を超えています。
発達障害の生徒向けに開発した学習用のプリント
学習効果の手応えを感じたのは、どのタイミングでしたか?
中村:個別指導塾同立有志会に通う学習障害の生徒が大学に進学し、大学院まで行ったときですね。勉強が苦手で中学校の授業についていけない子だったのですが、無事に高校に進学できて、そこからはメキメキと学力を伸ばしました。やはり学習の内容を細分化して、スモールステップで「解ける」という成功体験を積むことが効果的なのではないかと、手応えを感じました。現在まで、「Iシステム」で学んだ発達障害児の普通高校合格率は100%です。