サイトマップ - ヘルプ - お問い合わせ
 
 
現在位置: トップページ > トピック記事 > 高齢者・障害者支援サービス・取組 > 困難を乗り越えるためのiPad活用を提案するスタジオギフトハンズの取り組み(1/4)

困難を乗り越えるためのiPad活用を提案するスタジオギフトハンズの取り組み

1 障害ではなく困難を解消する方法を考えたい

スタジオギフトハンズでは、どのような活動をされているのでしょうか?

三宅:iPadを活用したライフスタイルの改善とトータルヘルスケアによる障害者支援が、事業の軸になります。私はもともと眼科医だったので、当初は視覚障害者の支援がメインでしたが、現在は産業医として、企業で働く障害者をテクノロジーで支援するためのコンサルティングなどを中心に活動しています。かねてより産業医は、仕事で病気や怪我をした人のケアや環境調整が業務のほとんどでしたが、最近は障害者雇用も増えていることから、企業が合理的配慮(※)を推進するうえで必要な準備や心構えについてのコンサルティングや研修を行うこともあります。

(※)「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。(「障害者の権利に関する条約」より抜粋)

コンサルティングや研修というのは、具体的にどのような内容になりますか?

三宅:たとえば、障害者雇用を担当する人事の方を対象にしたコミュニケーション研修などです。合理的配慮に必要なテクノロジーの選定や導入方法をお伝えします。また、障害を持つ当事者の人たちにも、自分の障害について人事の方や同僚など周囲に説明する方法を教える研修もあります。そこでは、どのような配慮が必要なのかを伝えるための適切なコミュニケーション方法を教えます。コンサルティングや研修を行う対象者としては、企業や当事者が多いですが、保健スタッフや医療スタッフ、介護福祉士など業種を超えた実施もしています。

「障害を抱える人が仕事をしやすい環境を物理的な側面から整えるだけではなく、多面的なアドバイスや教育を通して合理的配慮の実現を支援されているということですね。

三宅:はい。ただ、障害にフォーカスして合理的配慮を考えるのではなく、どんな困難を抱えているのかをきちんと汲み取ることを大切にしています。たとえば、文字が読めないこと、移動がしにくいこと、会議で空気が読めない発言をしてしまうことなど、さまざまな困難を抱えている人に対して、どのようなケアをすれば働くうえでプラスになるのかを考えることが、私が提供する支援であり教育です。ですから私としては、障害者支援ではなく、困難者支援という表現が適切だと考えています。

また、私は障害を持つ当事者も“自分の取扱説明書”を、相手に的確に伝えることも大事だと考えています。以前、私は東京大学先端科学技術研究センターが実施している「DO-IT Japan」という異才発掘プロジェクトに携わっていたことがありました。そのプロジェクトには発達障害児も多数参加していたのですが、そこで私自身も学んだのが、「自分の取扱説明書をつくる責任は、障害者本人にある」ということでした。

もちろん障害の程度にはよりますが、「自分は何ができて、何ができないのかを説明できないのであれば、困難者として合理的配慮を求める権利はない」という厳しい指摘も出るようなプロジェクトだったのですが、私の中でも「なるほど、当事者自らも積極的なコミュニケーションを試みてこそ、合理的配慮が成り立つのか」と気づき、障害や平等に対する概念がガラッと変わりました。

ただ、よく考えると「文字が読めない」という状態は、「日本語は読めるけど英語は読めない」ことに対する対策と同じです。だとしたら、障害について議論してもしょうがないわけです。そのことに気づいてからは、たとえば視覚障害という括りではなく、読めなくて困っているのか、それとも読んでも理解できないことで困っているのかなど、困難を種別で考える視点を持つようになりました。

障害者も「自分ができないことを説明できなくてはいけない」と話す三宅さん
障害者も「自分ができないことを説明できなくてはいけない」と話す三宅さん

ページの先頭に戻る

目次へ 次へ