障害者就労支援にあたり、データ入力や情報処理、ホームページの作成など、ICTを活用した就労の総合相談に特化した支援機関を設けることになった背景について、最初に神戸市保健福祉局の布真司さんから話を伺いました。
神戸市保健福祉局の布真司さん
これまで神戸市では、就職を希望する障害のある方や在職中の障害のある方に対して、就労に関するさまざまな支援を行う「しごとサポート(障害者就労推進センター)」という相談支援機関を4か所に開設していました。そこでは、チャレンジドや障害者雇用を検討する企業に対する相談支援などを実施。兵庫県内の民間企業における障害者実雇用率は、平成29年6月1日現在で法定雇用率である2.0%を超えるなど、支援への取り組みが実を結んでいると感じられました。
そうした中で、障害者の法定雇用率が2018年4月から引き上げられたことや、企業にとっては雇用障害者数にカウントできないが、障害特性から週20時間未満なら働ける方の就労促進、さらには障害者雇用の促進に向けた新たな分野での雇用の創造に対応するため、平成29年度より、週20時間未満の短時間雇用の創出や、介護事業所での就労促進、そして「しごとサポートICT」の開設などICTを活用した就労支援に取り組むことにしました。
「しごとサポートICT」では、より多様な働き方をバックアップしていきたいと考え、身体障害や精神障害などにより「家でなら仕事ができる」という人と企業とのマッチングを推進するため、「就労に関する生活面での相談及び指導・助言」「企業からの業務発注や雇用の場の拡大のための企業開拓及び企業支援」などの事業を展開することにしました。ICTを活用した在宅就労は、車いす利用者等の通勤困難の解消や、精神障害者や発達障害者の方等が周囲に影響されずに自分のペースで仕事が進めることができるなど、障害者の雇用機会の広がりにもつながるのではないかと考えました。場所や時間にとらわれない働き方を実現するうえで、ICTの活用はますます重要になると予想したからです。たとえば、これまで障害者の仕事は清掃や軽作業、簡単な事務補助の仕事などが中心でしたが、ICTを活用することで携わる仕事の領域が広がることによって、だれもが「しごと」を確保できるような働き方の選択肢の拡大にもつながると思います。
とはいえ、企業側にとって在宅就労は雇用管理、労務管理が難しいという意見もあります。そこで、「しごとサポートICT」は当事者の支援にとどまらず、障害者雇用を検討している企業への支援も担うことにしました。企業への働きかけについては、雇用促進のためのセミナーを年2回開催するほか、セミナーの講演だけでなく、実際の障害者雇用の現場に触れることで具体的なイメージをつかんでいただくため、企業向けの障害者雇用企業の見学会を行っています。また、企業からの相談を待つのではなく、積極的に企業にアプローチして営業活動をする「しごと開拓員」を平成26年度より配置するなど、取り組みを進めてきました。
こうした事業を展開するにあたり、「しごとサポートICT」の運営については、社会福祉法人プロップ・ステーションに委託することにしました。26年間にわたるICTを活用した就労支援の取り組みに加え、企業等との強いつながりのあるネットワークを持っている団体なので企業啓発や開拓への期待も含めた業務委託契約になります。ICTに特化した就労支援は全国初ということで、開設してすぐに新聞記事になるなど注目されましたので、新しい支援のかたちが、神戸市だけではなく全国に広まっていくことを期待しています。