1980年代から坂村健教授が提唱し推進してきたTRONプロジェクトでは、まだパソコンが普及していなかった時代に、コンピュータと人間との新たな関係性、そして組み込みシステムやリアルタイムOSの未来を予見し、これからのコンピュータ実現のために必要なハードウエアやOS(オペレーティングシステム)、ミドルウェア※2、アプリケーションの研究開発などを行ってきました。例えば、IoT(Internet of Things 物のインターネット)は最近よく耳にする言葉ですが、身の回りの物に超小型のコンピュータを組み込み、ネットワークにつなげることで、外部から操作できるようになったり、センサーによる自動制御を実現したりと、新たな付加価値サービスを生み出すことができます。
このようにあらゆる物にコンピュータが組み込まれ、ネットワーク化された世界が、私たち人間の生活を様々な形で支えてくれるのが、ユビキタス社会です。イメージ図にあるように携帯電話一つであらゆる家電が操作できたり、センサーが感知して自動的に家電の動きを制御したりする機能が、すでに現実のものとなってきています。
研究室のある東京大学大学院情報学環ダイワユビキタス学術研究棟にはカフェも併設されている
ユビキタス社会における生活空間のイメージ図
(坂村・越塚研究室提供 K. Sakamura, "The Objectives of the TRON Project”, In Proc. 3rd TRON Project Symposium, pp. 3-16, 1987.)
【用語解説】
※2 「ミドルウェア」
OSとアプリケーションをつなぐ役割のソフトウェア