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さわるミュージアムへの取り組み(4/5)

4. 「つくる」と「ひらく」さわる文化への気づきについて

目の見える方にとっては、さわって感じることは少ないのではないでしょうか。「さわる文字、さわる世界」の展覧会では視覚障害者に楽しんでもらうことも目的でしたが、晴眼者にさわって知ることのおもしろさを味わってほしいと思っていました。

視覚は一瞬でもののイメージをつかむことができますが、触覚では手のひらや指が触れた部分、つまり点でしか最初の情報を入手できません。その位置からダイナミックに手を動かして、上下、左右にさわる部分を広げていくと、点だった情報が線になり面になり、さらに立体となっていき、全体像を把握します。触覚の力で人間のイマジネーションを広げていく作業を、私は“つくる”と呼んでいます。

これに対して、繊細に指を動かしてさわっていく作業を“ひらく”と呼んでいます。たとえば、浮き出し絵画をさわってみるとします。最初はわからなくても、何度もさわっていくうちに、ぼんやりと輪郭がわかってきます。今まで閉じていた感覚や眠っていた触覚がひらく瞬間です。

仏像に触っている写真
※写真6 仏像にさわって顔をたしかめる

浮き出し絵画を手で触っている写真
※写真7 聖徳太子の浮き出し絵画の線をたどる

この展覧会がきっかけとなって、さわる展示に対する気づきが各地の博物館で始まっているので、企画者としてうれしく思っています。その関連もあって、最近ワークショップを依頼されることが多くなりました。2007年秋には、「さわってみると面白いし、新しい発見がありますよ」と、暗やみの中でさわってみるワークショップを何回か行いました。
初対面の人と会うときには、目が見える人は良きにつけ悪しきにつけ、目で見たイメージを第一印象としてとらえています。しかし見えない私たちにとっては、まず話してみないと同じワークショップに参加した人がどんな人なのかわかりません。暗やみに入ると緊張する方もいらっしゃるので、ワークショップではまず準備体操として「視覚以外の感覚で相手がどういう人か考えてみましょう」と、お互いに握手をしてもらいます。握手をすると、手の傾き方などで背の高さなどもわかってきます。
次は手と頭による触察体験。民族学博物館には世界のさまざまな民具や楽器があるので、それを借り出しました。視覚中心でものを判断している方たちにとっては、触覚だけで何か推理するのは時間がかかります。でも、それだけにあれこれ考える楽しさもあるわけです。じっくりさわってわかったことを他の参加者に伝達してもらいました。このような体験によって目で見て判断するのと違う面白さをわかっていただき、目が見える人に、目が見えない人に対するイメージを変えていただきたいと思っているのです。

私は「バリアフリー」とは、いやす優しさだと思っています。それに対して、「フリーバリア」は、障害を生かす強さの発想だと考えています。障害をいやす優しさではなくて、障害を生かす強さを訴えていきたいのです。視覚障害者がもつ文化を一つの異文化として捉え直すことが大切だと考えています。「フリーバリア」は、バリアという違いを取り除くのではなく、晴眼者と障害のある人がお互いのライフスタイルを文化として尊重し、その異文化間を自由に行き来することだと位置づけています。「フリーバリア」を意識しながら、ユニバーサル・ミュージアムの方向性を模索しています。

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