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さわるミュージアムへの取り組み(1/5)

1. 博物館のバリアフリーについて

博物館のバリアフリー化、障害者対応の充実という課題は、ここの博物館だけのものではありません。日本博物館協会でも「誰にもやさしい博物館」を提案、推進しています。

従来、博物館や美術館は、「見学」「観覧」という言葉が象徴しているように、視覚的に味わうことが中心の施設でした。ですから、「見る」ことができない人たちは、博物館からは一番遠い存在でした。

国立民族学博物館は、世界の民族の民具などが多く展示されています。初代館長の梅棹忠夫(うめさおただお)先生のお考えで、ガラスケースに入れた展示ではなく、手を伸ばせばさわれる露出した展示が多いことで話題になった博物館です。大阪で万博が開かれた跡地、万博記念公園の中に建設され、1977年にオープンしました。まだ世の中ではバリアフリーとか、ユニバーサルデザインなどが注目されていた時代ではないので、展示フロアは広大で複雑な構造になっています。既存の建物の場合、施設面でのバリアフリーを実現していくのはなかなか大変です。
私自身、中学1年のときに視力を失っている視覚障害者ですので、当事者の立場から提案し、館内に触知案内板や点字ブロックを設置しました。しかし、ここに就職して6年経った今でも、一人で展示場内を歩くことはできません。ですから視覚障害者が一人でなんとか博物館までたどりつけても、一人で見学するのはむずかしい状況です。

展示物の写真
※写真2 国立民族学博物館の館内(常設展示)

施設面でのバリアフリーだけでなく、情報のバリアフリーについても考えさせられることがあります。博物館で配布しているパンフレットが一例です。最近では、点字のパンフレットが用意されている博物館が増えています。ところが、一般向けのパンフレットはリニューアルしているのに、点字版は開館当時に制作したままだったり、貸し出し式にしていて返却してくださいというところもあります。点字のパンフレットは制作費も高いですし、使用するのが少数派で活用されることが少ないものだからなのでしょう。

誰にもやさしいとか、誰もが楽しめる博物館という言葉は耳触りがいいのですが、このような状況をみると、バリアフリーの実現にはまだ多くの課題があると思います。

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