視覚障害者の支援の現場では、どのようなICTが重宝されているでしょうか。
岸本:ICTの進化と多様化は目覚ましいことから、人間の活動をサポートするアプローチは多種多様です。そのため、お客様や支援の対象者が何を目的としているか、業務で何を成果物とするのかによって、重宝されるICTが異なります。あえて挙げるとすれば、「スマートスピーカー」、「アクセシビリティの高いウェブサイトやアプリケーション」、「OCR (光学活字認識)技術を活用したアプリケーション」は、どの現場でも重宝されています。
まず、スマートスピーカーは、発話した質問に対して検索をして結果を返します。視覚障害者は多数の検索候補を読んで吟味することが難しいため、AIを搭載したスマートスピーカーに話しかけるだけで検索してくれて、その結果も音声で読み上げてくれるので、とても便利です。
次に、アクセシビリティの高いウェブサイトやアプリケーションでは、音声読み上げソフトや画面拡大ソフトが正しく動作しやすいウェブサイトやアプリケーションが使い勝手の良いものになりです。ウェブサイトの場合、アクセシビリティを確保するためのガイドライン「WCAG2.0」や「JISX 8341-3」などが存在します。そのガイドラインに従うことで、視覚障害者の使い勝手の良し悪しを理解しにくい開発者も、アクセシビリティを確保しやすくなります。最近は、官公庁のウェブサイトを中心にアクセシビリティを確保しているものが増えているので良い傾向だと思います。
そして、OCR技術を活用したアプリケーションは、主に小型カメラや据え置き型のカメラ撮影機器を用い、印刷物を撮影して、印字されている文字を音声で読み上げることができます。視覚障害の程度を問わず、目で見ることによる負担を避けられるため重宝されます。さらに近年では、手書きで書かれたメモを読み上げるといった機能も備えるものが登場してきており、日常や職場で行われている「渡されたメモを理解する」という行為ができるようになりました。
このような新しいICTによって、視覚障害者の生活はさらに向上するでしょう。しかし、これらを使いこなすためのサポートが必要です。私はこれからも新しいICTをキャッチアップしながら、ICTで障害者の皆さんの生活を快適なものにするサポートを展開していきたいです。