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現在位置: トップページ > トピック記事 > 高齢者・障害者の現状と課題 > 高齢者にICTの有用性を伝えるのは誰? 〜高齢者と情報通信における現状と課題〜

高齢者にICTの有用性を伝えるのは誰?
〜高齢者と情報通信における現状と課題〜(9/11)

9. 企業もシニア市場対策に意欲

老テク研究会では10年以上、高齢者に使いやすい機器やサービスについてシンポジウム等を通じて発表しているが、これまで多くの企業は、「ICTの高齢者市場はない。あっても小さい」として、耳を傾ける人は少なかった。福祉機器としての開発に助言して欲しいという相談をされることはあっても、一般的なビジネスとしての検討をお願いしても相手にされなかった。しかし、高齢化の進展で昨年あたりから状況が変わっている。さまざまな企業や研究機関から、高齢者と情報通信機器やサービスについて意見を聞きたいという申し出をいただくようになった。団塊の世代の定年が近づき、いよいよ日本もシニアマーケットへの企業のアプローチが本格的に始まったのだと思える。

前出の3大問題について老テク研究会では次のような取組みをしている。
老テク研究会は任意団体であり、予算は限りなくゼロに近く、会員は在宅介護歴15年になる代表の大島眞理子さんと私という2名の主婦が自分達の財布でできる範囲で活動する小さな会であることをまず理解していただきたい。

(1) 機器やサービスの使い勝手の向上にむけての取組み

複数のICT関連企業に対して長年にわたって自主的に提案をしてきたので、かつて若かった技術者も今では幹部となり中年になった。自分の問題として取り組んでもらえるようなった変化は大きい。

3年前から早稲田大学国際情報通信研究センター加納貞彦教授の研究室に大島さんと私は客員研究員として参加させていただき、介護支援情報システム、「U(ユビキタス)ケアノート」の研究・開発に参加している。在宅介護に関わる家族や複数の専門家との情報共有を実現する情報システムであるデジタル版の介護ノートは遠距離介護で困っている人たちからも期待されている。

試作品を大島さんが2年前から使用しながら、経過を遠隔医療学会、電子情報通信学会などで発表し、実用化にむけて努力している。

また企業の若い技術者の中にも新しい市場として高齢者の研究に魅力を感じている人たちも増えてきている。総務省のデジタル放送の視聴覚障害者向け放送や高齢者ユーザビリティの研究会に委員として参加して、高齢者のアンケート結果などを紹介し、具体的な改善要望などを提言した。例えば、メーカーにはデイサービスセンターやグループホームでは複数の高齢者がひとつのテレビを見るので、リモコンは簡単な機能だけに絞り、複数販売してほしい。リモコンをなくしてもテレビがみられるように本体にもチャンネルや音量等を簡単に変更できるような機能を用意してほしい、などの意見を提案した。

電話については、米国の字幕電話サービスを政府の研究会や学会、マスコミを通じて広く紹介した。ネット上では日経BPの下記サイトに掲載。電話リレーサービスは欧米では広く普及した聴覚障害者と健聴者をつなぐ重要なサービスである。日本でもぜひ導入が進む事を期待したい。

電話リレーサービス 欧米で普及する情報アクセシビリティ策

(2) ICT学習機会の確保

シニアパソコン教室は参加希望者は相変わらず多いが、会員の人間関係や支援団体の調整などにトラブルが多く、事務局運営がうまくいかずに困っている場合も多い。あるいは講座内容がマンネリ気味で受講生が減少し、内容の活性化が課題となっているシニアネット団体も多い。

技術革新で進化する端末やソフトウエアの購入資金が不足し、会員名簿や会費の会計管理や魅力ある新たなカリキュラム導入ができないなど、シニアネットの教室では、パソコン学習そのものよりもマネジメントについて相談を受けることが多い。

高齢者だけで事務局を運営するのではなく、若い世代に参加してもらえると良いのだが、地方にいくほど若いコーディネーターの確保は難しい。

3年前から筆者が情報化推進委員として参加している松本市では、市役所の職員が事務局機能を担ったシニアパソコン教室を開催している。高齢者は喜んでいるが、市役所の職員の負担は決して小さくない。地方の高齢者のICT学習を支援する公的機関のありかたについて政府や自治体に支援をお願いしている。

若い人たちも参加している地域のNPOと事務局機能を分け合えるようなしくみや、SNS(Social Network Service)などの新しいネットの機能を活用して、シニアにも利用者層を拡げ、シニアネット事務局の負担を減らすような方法をネット企業に提案している。

(3) 高齢者のICT指導者の養成

シニアのパソコン学習を指導する資格としては、すでに企業や政府の外郭団体などが始めており、資格のある高齢者はすでに1万人以上と聞いている。ICTスキルの高い高齢者の方々からもっと社会に貢献し、活躍できるようなしくみがほしいという要望を受けて、新たな活動を始める予定である。

高度な技術や知識があっても、それを公開する場所がなくては活かすことができない。高齢者がネットで活躍しやすいような舞台、誰もが支援できるしくみを考えている。
具体的には、高齢者が講師となってICTの便利で楽しい活用方法などを紹介するネットイベントやネットセミナー(米国ではウェブセミナー、ウェブナーという)を実施し、シニアパソコン教室の楽しいカリキュラムや指導方法の情報共有ができるようなサービスを企業や各地の公共団体と協力して実現したいと考えている。

ウェブセミナーの講師は、自分で教材をつくり、動画で公開できるスキルが求められる。良い講師であることを認定するしくみも重要である。

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