高齢社会では、多様なニーズをもつ市民が社会の主役です。その主役たちが、まちづくりやものづくりにおいて、デザインの最初からかかわることができ、発言できるような仕組みづくりを、行政はもっと支援すべきです。
米国では、連邦政府の中で、障害をもって働いている人が17万6000人くらいいます。日本では考えられない数字です。某自動車メーカの全盲のエンジニアなどは、車のことについては、運転すること以外は何でも知っている、と豪語します。同じく全盲で七か国語がペラペラというドクターもいます。目だけでパソコンを操作する銀行の副頭取もいます。欧米では政府の高官になっていたり、ベンチャー企業の社長職にあったり、介助犬を連れて仕事をバリバリこなしている重度障害者は珍しくありません。ITの進化が、社会のあり方を変えたのです。
メディアは、日本の社会に対して、障害者や高齢者が弱いだけの存在というメッセージを送らないでほしいですね。障害者や高齢者は、Non-Abilityではないのです。たまたま障害をかかえたために、能力の発揮が一部阻害された状態の、Dis-Abilityなのです。技術は、その状態をカバーすることが可能です。それを理解すれば、年をとること、障害をもつということへの不安はかなり解消されるはずです。ITや科学技術が世の中に貢献できることは山ほどありますし、それによって能力を発揮できる人々が社会に対して可能な貢献も、山のようにあるはずです。
先月発刊された『スローなユビキタスライフ』でも、多様な人々が自分に合ったユニバーサルなIT機器で情報受発信できる未来社会を描きました。われわれがこれから住む日本の未来は、ユビキタスを駆使しつつ、子どもも大人も、幸せに暮らせるユニバーサルデザインの社会であってほしいのです。
「スローなユビキタスライフ」/地湧社 関根千佳 著
そのためにも各省庁、自治体、企業、研究機関に、ユニバーサルデザインの概念をしっかり理解していただきたいと思っています。
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原本作成日: 2005年9月13日; 更新日: 2019年8月19日;