アメリカの大学でコンピュータサイエンスを学ばれた中村さんから見て、日本におけるウェブアクセシビリティの進展具合はいかがでしょうか。
中村:最近、ウェブアクセシビリティに取り組む企業は圧倒的に増えてきていると思います。日本でもウェブアクセシビリティを推進しなければいけないということで、総務省や経済産業省を中心に、官公庁や自治体などの公的機関でルールを定めてきた背景があります。
「障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)」で、差別しないという内容にウェブアクセシビリティも関係することが認識された影響が大きいですね。アクセシビリティに関する法律が施行されたことで、自分たちもやらなければいけないと動き出す企業が増えています。SDGsの実践でウェブアクセシビリティを高める企業や、自社サイトのリニューアルを機に取り組む顧客が多くなってきました。
アクセシビリティが進んでいる海外の影響を感じることはありますか?
中村:アメリカは日本よりも圧倒的にアクセシビリティの意識が高いので、そのような海外の影響を受けて、日本でアクセシビリティが進むパターンも起きています。例えば、アメリカでは航空業界向けのウェブアクセシビリティの法律ができました。その法律は、アメリカに乗り入れている航空会社にも適用されます。そうすると、日本の航空会社も無縁ではいられません。さらにアメリカ国内ではアクセシビリティに関する裁判が多くあり、アメリカでビジネスをする日本企業も無関係ではいられないでしょう。
このように、まずは国際的な企業が海外で対応しなければならなくなり、そこから波及して日本の他の会社でもアクセシビリティを意識し始める流れがあるように思います。その動向を見た同業他社が「我々もやらなくてはいけないよね」ということで、国内のアクセシビリティが進んでいくことになります。