AI分野における障がい者の就労支援プロジェクトの概要について教えてください。
曽川稔さん(以下、曽川):本プロジェクトは摂南大学が主催し、株式会社オートバックスセブンの子会社であるエー・ディー・イー、障がい者の仕事と生活をサポートする太陽の家が共同で行っている研究です。
AIというものは、出来上がったばかりの段階で知能ゼロです。そのため、手作業でアノテーション(素材となるデータを準備し、AIに学習させる作業)を行い、覚えさせる必要があります。たとえば、私たちはイノシシの写真を見ると、すぐイノシシだと分かりますが、生まれたてのAIにその判断はできません。AIが「イノシシの写真だ」と判断できるようになるには、AIにイノシシの写真をタグ付けしてひたすら教え込む必要があります。
このアノテーションの作業は、四肢が不自由な人であってもパソコン操作を習得すれば、行えるようになります。重度の障がいを抱えた方でも、寝たきりでも、作業できる環境を作れば、就労の可能性が広がるのではないかと考えました。
そのような考えから、摂南大学が運用モデル設計の全体像を描き、エー・ディー・イーがAIラーニングシステムを開発。太陽の家の利用者8名にシステムを使用してもらい、2022年3月から実証実験を行っています。
なお、本プロジェクトは、もともとSDGsに特化したアイデアを募集する「大学SDGs ACTION! AWARDS 2020」で、摂南大学の学生が考案したプランをベースにしたものです。「人工知能を用いた障がい者の就労可能性の向上に資するDX協働基盤の開発と社会実装のためのシナリオ創出」という研究プログラムとして発表され、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の新たな「SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム」公募(2021年度)において、シナリオ創出フェーズに採択されました。