今後の展望について教えてください。
山田:スマートシニアライフ事業では、公民それぞれが異なるスタンスを取りながら、理想のために持てる力を尽くしています。例えば、私ども行政の強みは「信用力」。ICTに対して食わず嫌いになってしまっている高齢者にも、「お役所が主導している」という安心感を提供することで、デジタルの利便性を知っていただくきっかけにしています。
サービス間で連携できるプラットフォームをつくり、事業を展開していけば、高齢者のQOL及びデジタルリテラシーの向上、生活習慣の改善、健康寿命の延伸といった目的も果たせるでしょう。しかし、サービスを磨き上げ、ユーザーの需要に応え続けていくためには、やはり民間の目線で商業的なニーズも汲んでいかなくてはなりません。そうして事業を自立させていきたい、ということが大きな目標であり、難しいところです。
また、単にサービスを提供するだけでなく、新たな産業の素地になるようプラットフォームを構築していきたいと考えています。仮に、スタートアップ企業が高齢者向けに新しいサービスを企画したとしましょう。その企業が1万人でテストをしたいと思っても、スタートアップ企業にとって1万人のテストユーザーを集めることは、気の遠くなるような労力が必要になります。しかし、スマートシニアライフ事業のユーザーが数万人から10万人規模になれば、十分なテストベッド(実証試験用の環境)になりうるのではないかと思います。
そのような環境を提供できれば、大阪から新しい高齢者向けサービスが生まれるようになりますし、それこそ世界各国から「大阪へいけばテストができる」と企業が集積する可能性もあります。いずれにしろ、選りすぐりのサービスを真っ先に体感してもらえるプラットフォームがある。それは、大阪府民の皆様にとっても大きなメリットになるのではないでしょうか。