まず、ICT を使ったプログラミング教育をはじめられた経緯から教えてください。
禿嘉人指導教諭(以下、禿):最初のきっかけは、CANVASと日本マイクロソフト株式会社が行うプログラミング教育普及プロジェクトへの参画を打診されたことによります。肢体不自由な子どもは、体が不自由なだけではなくて知的な障害も併せ持つケースが多いのですが、プログラミングについて調べてみると、そうした子どもたちに大切な教育だと感じて参画することに決めました。
寺田篤生さん(以下、寺田):CANVASでは、かねてよりプログラミング教育普及の活動に取り組んでおり、全国の学校や自治体と連携しながら、カリキュラム提供や指導者育成などを実施してきました。そうした活動の中で遠隔地や障害の有無に関わらず、機会の行き届きにくい子ども達にもプログラミングやテクノロジーに触れる体験を提供することを目的にした日本マイクロソフトさんとの取り組みがスタートしました。 光明学園さんとは、障害のあるこどもたちへのプログラミング教育のモデルづくりを行うことになりました。
障害を持つ生徒たちに、プログラミング教育が合うのではと感じられた理由を伺えますか?
禿:手足が不自由な生徒は、作品作りの授業にかなりの時間を要します。そのため、生徒が作ったものが教育上、意図した出来上がりではなかったとしても、教師も作り直すように言うのははばかられます。その点、プログラミングのいいところは、完成品の目的があって、その目的を達成するまでのステップが踏めて、目的通りにいかなければ、すぐに自分で作り直せます。試行錯誤しながら取り組み、その結果もすぐに分かるというところが、障害を持つ生徒に受け入れやすいと感じました。
とりわけ知的障害を持つ生徒は、一回では理解することが難しいので、定着するまで繰り返し学習が必要です。授業の進行の一部をCANVASに依頼することもありましたが、おそらく健常者向けのワークショップの倍くらいの時間を掛けて丁寧に教えてもらったと思います。 あとは、肢体不自由だと手の動きにも配慮が必要で、たとえば、ドラッグのようにマウス・ボタンを押しながら動かすというのは難しいんですよね。プログラミングでゲームを作る場合、操作が難しいゲームは馴染まないので、完成品も使いやすくする必要があります。また、視覚障害の子どももいるのでパソコン画面のコントラストを上げようとか、授業設計において障害ごとにどこまで配慮するかは、いつも議論の対象になりました。
光明学園のプログラミング教育導入に尽力した禿指導教諭