凸版印刷株式会社では「東京都ICT遠隔手話通話等モデル事業」を東京都から委託を受けて実施しました。
聴覚障がい者向けトータル支援システムをプラスヴォイスさんの協力を得て東京都に提供し調整を重ねながら、最適な形でサービスを提供するための全体管理や実証実験の成果をまとめました。
今回の東京都の取り組みは、リアルタイムのコミュニケーション部分を追求することがミッションで、開発には作り手の思い込みだけではなく、支援を必要とされる方のニーズを確実に掴むことが欠かせません。聴覚障がい者の方々おひとりおひとり、障がいの度合いは様々です。福祉のサポートを必要とされている方、自立した生活の中でサポートを必要とされている方など、個々の要望は違います。いかに、聴覚障がい者の心理的な負担を軽くし、生活の質を向上させるかを常に意識しながら、社会的自立を支援する製品を作っていかなければならないと考えています。この東京都のモデル事業は様々な利用者の声を届けてくれる非常に有益な試みであり、今後の更なる発展に大いに役立てたいと思っています。
凸版印刷という社名もあり、皆さんにとっては印刷を行う会社というイメージが強いかもしれません。しかし1900年の創業以来、原点である「印刷術」を「印刷技術」に進化させ、「印刷テクノロジー」として事業分野を拡大。「情報コミュニケーション」、「生活・産業」、「エレクトロニクス」の3分野で事業を展開しています。
この「印刷テクノロジー」という事業基盤のもと、従来のような紙媒体で情報を伝えるだけではなく、事業の多様性の中で培われた技術・ノウハウを生かすことで、新しいコミュニケーションの提案が可能となり、この「聴覚障がい者向けトータル支援システム」を提案することが出来たのです。
シンプルで使いやすさを重視した、タブレット型端末
■遠隔手話通訳
「遠隔手話通訳」は、オペレーターが傍にいなくても、スマートフォンやタブレットからテレビ電話につなぐことで、手話通訳のサービスが受けられます。行政窓口に置かれた専用のタブレット型端末を使用しますが、タブレット型端末のトップ画面にある「手話」のアイコンをタップするだけで、コールセンターを呼び出せる仕組みになっています。呼び出された手話通訳者はヘッドセットをつけて応対し、映像で聴覚障がい者の手話を読み取ると同時に通訳をしながら、マイクを通して聴者(行政窓口)に伝えることにより、双方向のコミュニケーションが可能になります。コミュニケーションバリアを解消するサービスの一つです。
通訳センターとテレビ電話でつながる遠隔手話通訳サービス
■筆談「UD手書き」
株式会社プラスヴォイスとShamrock Records株式会社、アクセルユニバース株式会社、株式会社アドバンスト・メディアが共同で開発した筆談のアプリケーション「UD手書き」は、タブレット型端末のトップ画面にある「筆談」のアイコンをタップするだけで、タブレット端末が筆談機になります。事前に定型文を登録しておくこともできますので、行政窓口で必要な来場者への質問事項や、来場者からの想定される質問や答え等を登録しておくと、毎回同じ文章を書かなければいけないといったわずらわしさは無くなりますし、来場者をお待たせする時間も軽減できます。
また、建物の図面などを事前に取り込んでおくと、その上に手書きで場所を記して、行き先案内をすることもできます。さらに、音声認識機能も付いているので、聴者(行政窓口)は音声認識機能を使い、聴覚障がい者は筆談を行うという使い方で、お互いにストレスのない、スムーズなコミュニケーションを取ることができます。他にも、文字色の選択、文字の拡大縮小、背景を黒色にするなど、使用する方によって読み取りやすい状態にする便利な機能を持っています。
テンプレート(定型文)使用でさらにスムーズな筆談が可能に
■音声認識「UDトーク」
音声認識のアプリケーション「UDトーク」は、話した言葉がリアルタイムで文字に変換されるので、タブレット型端末のトップ画面にある「音声認識」のアイコンをタップするだけで聴者(行政窓口)の話した内容を聴覚障がい者は即座に読み取ることができます。健常者のお客様に対応するのと同じスピードで全ての情報をお伝えすることができるのです。自分で話すことができるものの、聴者の話が聞き取れない中途失聴者や難聴者の方に適しています。しかも1対1だけでなく、複数人での会話が可能であり、多言語翻訳機能もあることから外国人とのコミュニケーションも可能です。
ただし、音声認識の精度は当然100%ではないので、間違った変換が行われてしまうこともあります。そのような場合でも、簡単に修正することができるので安心です。
声をその場で文字変換するので、円滑な会話が可能