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マルチメディアDAISY版教科書の提供
(日本障害者リハビリテーション協会)(4/4)

4. 今後目指していくこと

今後、DAISY版教科書を製作していくにあたっては、いくつか課題があります。その1つが、ガイドラインの作成です。

例えば、ルビや縦書きという仕様は、もともとのDAISY規格ではサポートされていないものですが、日本のDAISY版教科書には、前述の通り、必須の機能です。それらのスタイルシートの仕様は、作り手側で共有していく必要があります。また、できあがった教科書がDAISY規格で正しく作られているのかを、専用のチェックツール等を用いて確認することも大切です。このような共通仕様や製作ルールを取り決めたガイドラインを、現在、各種ネットワーク団体と協議して内容を固めているところで、将来的には報告という形で公表し、ネット経由で入手できるようにしたいと考えています。

その他には、ツールの開発費の問題があります。DAISY版教科書は特定の環境に依存して作られているものではありませんが、パソコンのプラットフォーム自体がどんどん進化していくため、きちんと動作させるためには、適宜バージョンアップが必要になります。しかし、開発には大変な労力と時間とコストがかかるので、1つ1つの変化に対応していくことは現実的に不可能です。しかし、来年発表される次のDAISY規格では、ルビや縦書きもサポートしていただけるようですし、DAISYと互換性のあるEPUB形式(※)が一般化し、将来的にはEPUBにDAISYの配布フォーマットが完全に対応するだろうという状況も見えてきたので、もう少し製作しやすい環境になってくるのかな、とも思っています。また、その時には、ビジネスとして企業がアクセシブルなDAISYに注目し、関連ツールを開発してくれるのではないかと期待しています。

ただ、どちらにせよ、現在のようなボランティアベースの製作体制には、費用面においてもクオリティ面においても、限界があります。理想としては、新しい教科書を作るときには、必ず紙だけではなく、デジタル版も製作するような仕組みになっていってほしい。もちろん、教科書を製作する出版社側が全てを負担することは難しいので、そのあたりはきちんと、国の責任で推進していくことが必要となってくるでしょう。

なお、当協会では、平成13年度NICT助成事業により「インターネットを活用したリアルタイム字幕通信役務の提供」について助成を受けました。今でこそ字幕ツールも色々と出てきていますが、この時代としては画期的な試みだったと思いますし、行った意義は大きかったと思います。DAISY版教科書をはじめとするデジタル教科書についても、私たちのような団体が草の根的な活動を行っていくだけではなく、今後は開発、普及、啓発のために、国からの効果的な予算措置や助成等がなされることを期待しています。

(※)EPUB形式とは、米国の電子出版関連団体のIDPF(国際電子出版フォーラム)が開発した、電子書籍フォーマットの規格のこと。

取材日:
2010年12月
取材協力:
(財)日本障害者リハビリテーション協会
取材者:
独立行政法人 情報通信研究機構 情報通信振興部門 バリアフリーサイト

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