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福祉工学が作るバリアフリー技術(3/5)

3. 先生が開発された福祉機器はどんなものがありますか?

今まで「見る」「聴く」「話す」などの機能が低下した人や、肢体不自由の方を助けるバリアフリー技術の開発に取り組んできました。私がはじめに取り組んだのは、聴覚障害者が音声を触覚の刺激で読み取る装置「触知ボコーダ」の開発でした。視覚障害者が点字で文字を読み取るように、音声を指から感じとるもので、音声の成分を16段階に分けて、16列に並べたピンを通じて感覚の振動パターンに変換する装置です。その後、触覚ボコーダを原型に、声を指で触れる「タッチボイス」が生まれました。

触知ボコーダの写真

※最初に開発した「触知ボコーダ」

タッチボイスの写真

※改良された「タッチボイス」

なかには、身近な謎解きから新しい研究のヒントが生まれたものもあります。九官鳥の声は人間と同じように聞こえるのはなぜかと調べてみると、声の波形は人間とは違いますが、人間の脳は九官鳥の声を人間と同じ音声として認識していることがわかってきました。そこで九官鳥と同じような音声をつくる研究を進めました。また、九官鳥が口を開けたまま「パ」、「バ」、「マ」の音を出せるしくみもナゾだったのですが、あるとき腹話術のいっこく堂という人が口を開いたまま「パ」、「バ」、「マ」の音を出すのを見て、ナゾときのきっかけが得られました。腹話術師の口にいろいろなセンサーをつけて音と画像を記録し、それを分析した結果から、「パ」、「バ」、「マ」に聞こえる仕組みがわかりました。

人間のコミュニケーションは、単に内容を伝えるだけならテキスト情報でも役目を果たせます。その上に、声にイントネーションを加えることによって話し手の気持ちも伝わるのです。そこで気持ちも伝えるために、九官鳥や腹話術をヒントに、イントネーションの出せる人工喉頭の研究に取り組みました。

このような研究の結果生まれたのが、「電気人工喉頭」(ユアトーン)です。喉頭がんなどで声帯を失った人でも、この装置から声の元となる音源を送って、口を動かすと、共鳴して声になります。装置には息の強さによって声の抑揚を制御するセンサーが付いています。この装置は福祉用具に認定されて障害者が手に入れやすくなり、現在、日本ではトップシェアになっています。

ユアトーンの使い方の写真

※のどにあて音を送り込み、口を動かすと声になる

ユアトーンの写真

※電気式人工咽頭装置「ユアトーン」

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