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実用的な福祉ロボットのさきがけ
食事支援ロボット「マイスプーン」の開発(3/6)

3. 開発で苦労された点についていくつか教えてください

「マイスプーン」は直接人の口に食物を運び、人と接触するロボットですから、安全面でも多くの検討が必要で、時間をかけて取り組みました。

ロボットアームの位置についてもさまざまな研究を重ねました。アームの長さを短くしたほうが小型化できますが、そうするとアームの届く範囲も限られます。はじめはアームの長さが短くてすむよう正面に置く形で試作しました。ところが実際に食べるときには機械が邪魔になり、現在の位置、つまり利用者から見て右側になりました。

ユーザーインターフェースは、眼鏡のツルにレーザーポインターを付けて、そのレーザーを光センサーで受けて操作する形を試作していました。レーザーポインター方式はわずかな頭部の動きでたくさんの命令を入力することができ、精緻なコントロールができるからです。刺身にしょうゆをつけるという高度な指示もできるのではないかと考えていました。ところが試作機を使った方から「コマンドが多すぎて疲れてしまう」という意見が出ました。コマンドが多いほうが使いやすいと考えたのはエンジニアの発想で、ユーザーにとってはシンプルな方がよかったのです。長年研究してきたのですが、レーザーポインターの利用は思い切って中止しました。ユーザーにとっては、機械を操作するインターフェースが命です。使っている技術が高いとか低いとか、何年研究しているかではなくて、ユーザーにとって使いやすいこと、食べやすいことが一番なのです。

食事を入れるトレイもさまざまな試行錯誤を重ねました。ロボットアームは直線的に動くので、直角の器が動かしやすいのです。また、普通のお皿を使うと密集して置けないので、どうしても食事の量が少なくなります。弁当箱は最少のスペースで必要な量を密集して置けます。そのためにこのような弁当箱型の容器になりました。

安全面についても、万が一操作を誤ったとしても、ひっくり返して熱い食べ物をこぼすことはないように工夫しました。

最初の試作機は、食べるよりもこぼす量のほうが多くなってしまいました。フォークが引っ込むときに食べ物も引き込んでしまい、食べられなかったこともありました。特に崩れやすいもの、豆腐やご飯などを口まで運ぶスプーン・フォークの把持機構には大変苦労しました。つかんでから一度止めて、スプーン・フォークを90度ひねってから動かすようにしたことで、スムーズにつかめるようになりました。開発を進めていくにあたっては、エンジニアもマイスプーンでたくさん試食しました。

このような地道な研究を続け、さまざまなノウハウを結集させて徹底的に使いやすさを追求し、現在の形で製品化しました。

「すぐれたデザインは、線1本にいたるまで理由がある」とあるデザイナーが言っていますが、マイスプーンも細部に至るまで全て検討や実験を得た上での理由があります。

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