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さわるミュージアムへの取り組み(3/5)

3. 受け入れる側の意識改革が必要ですか?

この展覧会によって、受け入れる側の博物館のスタッフにも大きな意識変化がありました。それまでは視覚障害者はたまにしか来館しませんでしたから、どのように対応してよいかわからなかったようです。ところが、連日白杖を持った視覚障害者が来館し、展示をさわって楽しんでいる姿を見て、博物館が多様な方たちを受け入れ、多様な楽しみを提供することの必要性を感じるようになったのでしょう。博物館におけるバリアフリーは、設備面の取り組みよりも人間の意識のバリアフリーこそが大切なのだと思います。

最近では展示品の音声ガイドなどが用意されるところもあって、以前よりも便利になってきています。しかし音声ガイドは機械なので、融通がきかないこともあります。興味があって、もっとじっくりさわってみたい作品があっても、音声ガイドはどんどん進んでしまったりします。誰しも興味があるものについては詳しく聞きたいし、飛ばしてもいいかなと思うものもあるでしょう。

このような視覚障害者の願望を満たして柔軟な対応ができるのは、古くて新しい方法、やはり人による説明です。人が案内してくださるのに勝る方法はないのだと思います。日本でもボランティアガイドの力をお借りするミュージアムが増えています。ここの博物館でも一般公募した「みんぱくミュージアムパートナーズ」の方々の活動が始まっています。ボランティアスタッフとして活動していただくためのさまざまな研修がありますが、全盲者、弱視者への介助方法の研修もあります。

最近、言葉による作品鑑賞会を行っている美術館もあります。中途失明の方で美術鑑賞が好きだったり、絵画をいろいろ観た経験がある方は言葉でイマジネーションを広げていけると思います。しかし、美術の素地がない人の場合は、言葉だけで美術品を鑑賞するのはむずかしいこともあるようです。

アメリカ、ニューヨークのメトロポリタン美術館では20世紀の初めから視覚障害者が芸術作品に触れる機会を提供しています。展示品の現物や複製品をタッチ・コレクションとして収蔵していますし、「タッチ・ツアー」も行われていて、エジプトのスフィンクス像の実物にさわったりすることもできます。私もプリンストン大学で研究していたときに参加してみました。メトロポリタン美術館では、スロープをつけるなど設備のハード面から、ボランティアの活動などソフト面の部分までをコーディネートする担当者として、アクセス・コーディネーターという職種の方が館内のバリアフリーに取り組んでおられます。
一方、日本の場合は、各施設の学芸員の方の努力で成り立っている部分があります。今後ユニバーサル・ミュージアムを実現していくためには、設備面の整備だけでなく、ボランティアの方たちの力の上手な活用など、博物館全体で取り組んでいくことが必要だと思います。

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