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聞こえない立場からユニバーサルデザインを提案しています(3/6)

3. 企業に提案しているユニバーサルデザインについて

聞こえないと、生活のなかで不便なことがいろいろあります。たとえば最近の家電製品類は音も振動も非常に小さくなっています。そのため、電気掃除機は使用中にうっかりスイッチを切ってしまっても、コンセントが抜けていても気づきません。換気扇も消すのを忘れてしまい、つけっぱなしという失敗が多くあります。

家電製品の場合、音だけでなく、光や文字表示、振動などで動作中であること、エラーであることが見てわかる工夫があると、聞こえない人も使いやすくなります。私は生活の中での失敗談もお話しながら、生活の不便さ、それを解決するための提案をさまざま企業で講演しています。そのほか、製品開発のモニターになったり、聞こえない人たちの意見を集めて企業に提出したりもしています。ハード面だけではなく、サービスなどの人的な対応、ソフト面についてもアドバイスさせていただくことが多いです。

最近では使用中に点灯している掃除機や換気扇が発売されています。玄関チャイムも音が鳴ると光で知らせてくれるものが出ています。

また、「香り」で社会貢献をめざしている株式会社シームスでは、商品開発のお手伝いをさせていただいております。

聴力を失ってから、嗅覚が敏感になりました。香りに興味を持ち、勉強を始めたのですが、香りは、聞こえる聞こえない関係なく誰にとっても有効な情報伝達方法です。

たとえば携帯電話。皆さんは電話やメールの着信を、音楽や様々な着信音で楽しんでいると思いますが、聞こえない人は振動や光でしか知ることができないので面白くないと常々思っていました。そんなときシームスが、メールや電話の着信に反応をして香りを出す携帯ストラップを作っていると知り、とても興味を持ちました。周囲の聞こえない人たちに実際に使ってもらって、たくさんの意見を届けました。多くの匂いの種類があり、ラーメンや焼肉などユニークな匂いからアロマの香りまであるので、若い人たちの間で人気になったようです。香りの目覚まし時計などもあったのですが、もともとシームスでは面白い商品をつくることが目的ではなかったので、現在は扱っておりません。

現在注目されているのは、わさびのツーンと鼻をつくにおいで火災を知らせる「臭気火災警報装置」です。火災の発生を検知すると、わさびから取り出したにおい成分が霧状に噴き出す仕組みになっています。数年前から何度も臨床試験を重ね、寝ているときでも起床できることがわかっています。それだけでなく、聞こえない人は、聞こえる人に比べると匂いに対する反応が早いこともわかったのです。

聞こえない人が生活の中で一番困るのは、非常事態のときです。改正消防法が交付され、2006年から住宅火災報知機の設置が義務付けられました。既存住宅については、各市町村の条例によって、2011年6月までに設置が義務付けられる期日が決まります。住宅火災報知機の多くは音で知らせるものなので、聞こえない人には使えず、逃げ遅れてケガをしたり、亡くなったりする人は多くいました。音だけでなく、光や振動、匂いなどさまざまな方法があれば、それだけ危険に気付ける可能性も大きくなるのです。
「香り」は今後、様々な分野で注目されていくツールだと私は思っています。非常時以外でも、嗅覚を利用した情報提供には可能性を感じますね。

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