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現在位置: トップページ > トピック記事 > 情報バリアフリー全般 > ICTを活用したい障害者と活動できる人材の育成

パソコンなどのICTを活用したい障害者と共に考え、
活動することのできる人材の育成が必要です(1/6)

1. インタフェースのユニバーサルデザインついて

もし人差し指を1本なくしてしまったら、はさみはそのままでは使いにくいものになってしまいます。からだに障害のある人は道具を使うための許容量が狭いため、われわれが普段使っているようなものでは使いにくいことがあります。たとえばパソコンのマウスは手のひらで覆うようにして使用するため表面の形がツルリとしています。義手の人はそのままではつかめませんが、マウスの上になべ蓋のつまみのような出っ張りを付けてあげると使えるようになります。

つまり、利用者が10人いれば10人分の工夫が必要になります。その利用者に合わせたさまざまな改良や改造が必要ですが、全てをオーダーメイドするのは手間も時間もかかって効率が悪い。できるだけユニバーサルデザイン的な発想をうまく取り入れていかないといけません。

私は神奈川県総合リハビリテーションセンターなどにおいて、電子工学系のリハビリテーションエンジニアとして17年間勤務しました。頸髄損傷や脳性麻痺などによって生活のほとんどに介助が必要な人たちのために何ができるか。当時普及しはじめたパソコンを使って道具を試作したりメーカーにお願いしたりしながら、コミュニケーション支援、情報支援をやり始めました。

今から10年前になりますが、アメリカのスタンフォード大学のニール・スコット博士の下で、1年間研究開発を手伝いました。パソコンのキーボードやマウスはパソコンに応じて買い分けなくてはなりません。一方、基本ソフト(OS)がバージョンアップするたびに、ソフトウェアを更新するためのコストがかかります。一般用のキーボードやマウス、各種ソフトウェアは数が出るのでそれなりのコストに抑えられますが、障害者用は数が限定されるためコストが余計にかかります。これでは不公平です。

ニール・スコット博士は、1台の障害者用入力装置でサンマイクロシステムのワークステーションと、Macintosh、Windows(DOSV)の3台のパソコンをすべてコントロールできるインタフェースシステムTAS(total access system)を開発していました。OSに依存せず、利用者の最も使いやすい1つのインタフェースによりすべてのパソコンが使え、同じコマンドで同様に動かせるものでした。例えば、音声認識インタフェースに言葉を発するだけでどのパソコンもコントロールできます。これさえ持っていれば、OSのバージョンが変わっても、自宅と職場のパソコンが変わっても、共通インタフェースをもっているシステムであれば自由に利用できる。まさにユニバーサルデザインです。このシステムはアメリカでは市販されていました。現在ではキーボードやマウスとパソコンを繋ぐのは市場原理によりUSBになってきたので基本的にはいらないのですが、大切なのは思想なのだと思います。

一方、障害者のためのソフトウェアは、市場に出回っているパソコンの開発速度が速くて、OSの更新に追いつくのがせいいっぱいです。OSが変わるたびに本来必要のない対応をしなければならないからです。障害のある人のために使いやすくしたり、利用者の幅を広げるのではなく、OSという環境が変わるからそれに合わせて移行しなければならない。そこに資金と労力をかけるのは無駄だと思うのです。そのためよいインタフェースや、楽に使える道具の開発に投資しにくい状況になっているのではないかと思います。

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