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ウェブアクセシビリティセミナー in 大阪 講演内容(概要)

2003年2月12日に大阪で開催したウェブアクセシビリティセミナーでの、各講師の講演概要およびパネルディスカッションの概要をまとめました。

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a. 基調講演:『ウェブアクセシビリティ確保の重要性』

講師: 株式会社ユーディット 濱田英雄 氏

濱田氏は、経済産業省「情報バリアフリー標準化委員会」における「ウェブ・アクセシビリティWG」の主査を務めるなど、ウェブアクセシビリティの普及にご尽力されています。ウェブアクセシビリティとは何か、また自体等において、誰もが見やすいウェブアクセシビリティの必要性についてご講演いただきました。

講演内容(概要)

障害者は324万人と言われている。決して少数ではない。これだけの人数がおり、その必要性を理解してほしい。さらに、高齢化の問題がある。現在でも、2000万人、2015年には、4人に一人が65歳以上になる。現在の高齢者は、好奇心があり、良いものは取り入れ、パソコンが欲しければ買う経済力もある。皆いずれは高齢者と呼ばれる時代がくる。そのとき自分たちが使えないのでは困る。

ウェブが見にくく、上手く情報が取れない場合、そのページは見ないようになる。そのようにならないよう、配慮したホームページを作っていかなければならない。

海外のウェブアクセシビリティに関する事情について、欧州連合や国際標準化機構等の国際機関や、米国国家規格協会等の民間グループによって、アクセシビリティの標準化を目指して努力している。北欧諸国については独自のアクセシビリティガイドラインを発表している。ポルトガルとタイではウェブ・アクセシビリティを直接要求する法令を導入した。オーストラリアやカナダでは障害者が一定の情報にアクセスできる事を市民権とする法令を持っている。また、アメリカではリハビリテーション法508条によって連邦政府は、障害者にアクセシブルでないIT機器の購入やWeb作成が許されなくなった。

世界的な基準はW3Cと呼ばれる。ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアムいう組織があり、WWW技術と関わりが深い大学、研究所、個人などで作られている非営利団体である。その中のWAIという分化会が、ウェブコンテンツのアクセシビリティガイドラインを発表している。

国内の状況は、総務省(旧郵政省)において、「インターネットにおけるアクセシブルなウェブコンテンツ作成方法に関する指針」がある。別に経済産業省において、「情報バリアフリー標準化委員会」の中の作業部会「ウェブアクセシビリティWG」で来年度の日本工業規格(JIS)化を目指してガイドラインを作成している。

障害のある人が、インターネットを見るうえで問題点は何か。視覚障害は大きく分けて3つある。一つは全盲で、画像や色による情報提供は認識できない。そのため、音声ブラウザや点字ディスプレイで理解できるように作る。もう一つは、弱視であり、見え方の個人差が大きい。視力だけでなく、視野の一部が欠ける、狭くなる、物がゆがむ、眼球振動など多様である。このような人たちのために、小さい文字の使用や配色などに気を配る必要がある。さらに、色覚障害(色覚異常、色盲)と呼ばれる障害がある。色の見え方に個人差がある。そのため、背景色と文字色の配色に注意が必要である。

聴覚障害者は、音による状況判断ができない。エラー音など、音で情報を知らせる場合、音による情報には文字による情報を合わせて提供することが必要となる。また、手話には基本的に「てにをは」がなく、長い文章が理解しにくい人もいるので、文章は解りやすく作る。

高齢者は、外来語が理解しにくいので、なるべく外来語を減らす。もしアルファベットで書くのであれば、読み方や意味などを補足する。また、視力低下と老眼が同時に進行し、文字が小さいと読めない、あるいは、配色によっては見えない。そして、マウス操作が苦手で、小さなボタンを押す時にずれてしまうという問題がある。したがって、キーボードでも操作ができるようにする。認識力の低下がみられ、デザインが変わると使いにくい。そのため、基本的な配置や、デザイン・用語の統一を図る。

上肢障害者下肢障害、特に上肢障害の問題が多い。一つはマウス操作が困難なことがある。そのような人は、マウス以外のものを使っている。基本的には、少しでも動く身体部分があれば意思伝達をすることは可能で、インターネットを使うことも可能である。二つ目はキーボードの入力が難しい。スキャンで、入力が可能なように配慮する。もう一つは、二つ以上のキーを同時に押せないという問題がある。

アクセシビリティとは、テキストだけのページを作れば良いと考えられるが、「テキストだけでアクセシブルにした」ということは、差別とは言わないが、区別しているような気がする。一つのページをなるべく皆でみることができることが正しいアクセシビリティだと思う。ウェブ作成者に意識されていないのが、ウェブで情報を得ているのは若い人達だけではないということである。視覚・聴覚・肢体に障害を持つ人もおり、高齢者や日本語を母国語としない人もいる。何よりも見る人達には知識力の違いがある。

一般的なチェック方法について説明する。インターネットエクスプローラー、ネットスケープ両ブラウザで確認する。キーボードのみで操作が可能か確認する。音声ブラウザで確認するのが一番ですが、ない場合はブラウザで画像を表示しない設定にし、その状態で正しく内容がつたわるかを確認する。近くにいる目の悪い人に見てもらったり、その内容を知らない人に見てもらうなどすると、自分が良く分かっているがゆえに見落としているところに気付いたりする。

また、チェッカーとよばれるものを使う。Bobby「ボビーチェッカー」Bobby 3.2(英語)、IBM「アイ・チェッカー」Personal i-Checker Ver 1.0、みんなのウェブ「ウェブヘルパー」(総務省)、HTMLのチェックソフトなど。

最後に、制作者が、まず、さまざまな人が使っている、ということを意識することが大切である。ウェブは、人が作って人が見るものである。「あなた方を無視するつもりはありません」と言う気持ちが大事。心が有るか無いかはウェブに現れる。少なくとも門前払いをするような事はしない。知らないうちに加害者になっているということがないようにしたい。

そして、必ずしも完全である必要はない。1つのサイトが100歩アクセシブルになるより、100のサイトが1歩前進すること、多くのサイトが少しずつアクセシブルになるのが大切。より多くの人がアクセスできるように、できる限り配慮したウェブ作りを心がけたい。
特に自治体のホームページは、そのような責務があると思う。

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b. 講演:『公共図書館のウェブ活用と視覚障害者の情報アクセス』

講師: 大阪府立中央図書館 杉田正幸 氏

視覚障害者にとっての公共図書館の電子化がもたらす意義と課題を踏まえ、今後の電子自治体におけるウェブアクセシビリティ確保の重要性についてご講演いただきました。

講演内容(概要)

視覚障害者がウェブを利用する場合には、ウェブを音声で読み上げるソフトを使いながらインターネットを利用する。視覚障害者が使う音声読み上げソフトは、国内に数種類存在する。一つの例を挙げれば、視覚障害者の間で最も利用されている音声ブラウザである、日本IBMのホームページ・リーダーでは、音声の読み上げのスピードを変更しながらキーボードのみでインターネットアクセスを行う。同ソフトでは通常のテキストは男性音で読み上げ、リンク部分は女性音で読み上げる。

大阪府では、2003年の「電子府庁」の実現に向け、誰もが便利で使いやすいホームページにすることを心がけている。ホームページに大阪府の「ユニバーサルデザインの考え方」が書かれている。実際、大阪府のホームページが本当にアクセシブルであるかどうか。ウェブアクセシビリティの取り組みはされていて、障害者にも少しずつ使いやすくなっている。しかし現状は、アクセシブルでないサイトが多数存在する。

大阪府立図書館では、1974年から、対面朗読サービスを中心に、障害者への図書館サービスを続けてきた。特に蔵書の検索は、「本を自分で探せる」ということで、障害者の方から評価を得ている。

国立国会図書館、全国47都道府県立図書館、12政令指定都市立図書館で、ホームページのアクセシビリティについて調査を行った。60公共図書館に対して検証システムを使い評価した。インフォクリエーツ「ウェブバリアファインダー」では、フレームの使用の状況、画像の説明、マップを適切に使っているかについて、「ウェブヘルパー」では、トップページ、利用案内について調査した。点数化したところ、81点以上だった図書館がなく、61〜80点というのが15館(25%)だった。フレーム使用の状況は、フレームを使用している図書館は29、未使用は31館とほぼ半分の図書館が使っている。次に画像使用について、トップページで画像を適切に使用している図書館は10館であった。マップの使用状況は、トップページでマップを使用していないのは55館、マップを適切に使用していない図書館は4館であった。ウェブヘルパーによるトップページの調査で、評価Aの公共図書館は3館しかなかった。

公共図書館の良い例を紹介すると、フレームを使わずにナビゲーションスキップをつけている例や、開館日カレンダーを文書で表したり、休館日のみ音声ブラウザで理解しやすいようにしている図書館もある。また、図書館でホームページの製作基準を作っており、その中に音声ブラウザでのアクセスについても配慮することを規定している図書館がある。担当者がウェブアクセシビリティに対して理解があれば、このようなページ製作ができるのだと思う。

大阪府立図書館の新たな取り組みには、視覚障害者の公共施設でのインターネット利用がある。その他、インターネットやスキャナで読み込んだ絵や文字などを立体的に浮き出して表示する点図ディスプレイを使い、絵を視覚障害者が触って理解できるようにしている。また、大阪府マルチメディアモデル図書館展開事業として、録音図書のネットワーク配信を始める。

大阪府立図書館、全国の公共図書館では、さまざまなサービスを提供している。ただ、新たなサービスをすればするほど、障害者への配慮を忘れがちになっている。障害者が主体的に自治体ホームページを利用し、その問題点を明らかにし、声に出すことが重要である。また、障害者自身が、自治体職員としてウェブアクセシビリティにかかわる必要がある。

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c. 講演:『自治体におけるウェブアクセシビリティへの取組事例』

講師: 兵庫県篠山市 植村富明 氏

篠山市の公式ホームページでのアクセシビリティの考え方や、アクセシビリティ確保のための取り組みの実際について、ご紹介いただきました。

講演内容(概要)

篠山市の公式ホームページでのアクセシビリティの取組に至った経過について説明する。1996年、職員の手で旧篠山町役場のホームページを作成した。99年に篠山、西紀、丹南、今田の3町が合併し篠山市が誕生し、この時点で3つの町がホームページを持っていたが、ホームページは旧篠山町に統合した。合併すると、さまざまな町が一つになってしまい、地域のアイデンティティが消滅するので、抵抗感があったと思う。その意味で、ホームページが住民のアイデンティティに果たした役割はあったと思う。

篠山市のホームページの特徴は、大きく3つの視点がある。一つは、電子自治体として行政情報をいかに流すか。二つ目が、地域情報、観光情報を蓄積する。三つ目が、交流という形で、双方向を活かしたインターネット上の情報交換をする。これらを柱に本市のホームページも1、2年で大きな更新を遂げた。

2つの出来事をきっかけに、アクセシビリティの取組を始めた。一つは、昨年6月に工場からフェノールが水道に流れ込んで騒ぎになったことである。その中で、掲示板をやむなく停止することがあった。マスコミによってこの掲示板の停止が伝えられ、その反響があった。ホームページを活用した住民の発言が災害を通じて明らかになったことは、われわれのまちでははじめてのことであった。インターネットが市民の中で広く使われていっている一つの表れではないかと思う。二つ目は、昨年7月に、全国自治体ホームページランキングというのがある団体によってつけられ発表され、本市のホームページにもたくさんのアクセスがあった。そして、いたるところの掲示板で私たちのサイトに対して、ある種の評価と査定がなされていた。その中でも、自治体のサイトのアクセシビリティに対して評価がされたものが目を引いた。確かに、それまでは、作り手の主観的な感性によりデザインは違っていた。そこで、アクセシビリティを基本にしてデザインを統一し、内容を一新することとした。特に、行政情報に関して、何々課のどこどこの情報というように部門別に配置されていたものから、何を知りたいかという目的別の機能的な内容とデザインを考えた。ホームページを見直したのは、アクセシビリティの問題もあるが、何よりも電子自治体へ向けた取組を始めたかったからである。住民はどんな目的でやってくるか、何がしたいのかという視点をホームページ作成の大きな目標としてきた。

電子自治体には標準化の問題がある。行政サービスは、共通のサービス項目があるが、町ごとに違いがある。電子自治体はその差を埋める。どこででも同じ業務ができる、インターネットを使い同じサービスが受けられるということが大切になる。

これからの取組は、マルチメディアとして活用することである。例えば市の広報では、まず、HTMLを作り、さらにPDF、映像版、テキストの5つの形を用意した。本来のマルチメディアというのは、単に高機能というだけでなく、だれでも難しいことを意識しないで使いこなせるような道具にするべきである。

今後のホームページについて、標準化および作成者の個性に依拠し、住民がデザインを含めて自分で構成を変えられるポータルページ作りをしたい。地域イントラを活用して、住民がデザインを変えられるようにして、アクセシビリティの面からも、市民に使いやすいサイトにしていきたいと思う。

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d. 講演:『電子自治体ソリューションでのアクセシビリティ確保に向けて』

講師: 富士通株式会社 飯塚潤一 氏

電子自治体におけるアクセシビリティ確保のあり方についてご講演いただくとともに、今後の電子自治体ソリューションについてご紹介いただきました。

講演内容(概要)

「情報通信白書平成13年度版」によると、市区町村のLAN整備率やパソコン保有率が着実に伸び、Webサイト開設率も83%(2001年度)に達している。しかし、Webサイトを見ると、従来紙で配布していたものを単に電子化しただけの自治体がある一方、Webサイトの作成を機会に組織内の連携や情報公開を推進している自治体もあり、自治体間でWebサイトへの取組みに格差が生じている。

自治体がWebサイトで提供している情報は行事・イベント、観光・物産などが圧倒的に多い。しかし、住民が求めている情報は、保険・医療、防災・災害、福祉などの情報である。自治体が出したい情報と、住民が欲しい情報の間にはギャップがある。

自治体のWebサイトは三つの段階で進化する。まず、自治体から住民への情報提供のみが第一段階である。このレベルの自治体が多いと予想されるが、このレベルにとどまっていたのでは自治体の電子化は進まない。次の段階は、利用者からの電子申請、電子調達に対し、自治体がアクションをおこす双方向のコミュニケーションを可能にしたものである。この段階ではまだ組織内に閉じている。最終段階では、国、県、近隣の市町村などと組織横断的に情報を共有し、さらに民間のデータベースとも連携し、官民連携のワンストップ行政サービスとなる。これが電子自治体のあるべき姿である(総務省「電子政府・電子自治体推進プログラム」)。

ビジネスサイトと自治体サイトは、閲覧者のニーズを満足する情報・サービスを提供する点では基本的に同じである。しかし、ビジネスサイトと異なり、自治体サイトは住民すべてを対象とし、扱う個人情報も多い。すなわち、電子自治体の課題は、アクセシビリティ向上とセキュリティ・個人認証の確保である。

e-Japan戦略においても、すべての住民に対して公平な利用環境を保障するために、(1)物理的なアクセス、(2)使いやすい機器やサービス、(3)情報弱者へのIT教育、とアクセシビリティの必要性が明記されている。公共施設やサービスにおいては「(コストがかかるので)アクセシビリティ対応しない」と言えない。

障害者・高齢者のIT機器利用の問題は多岐にわたっているが、それらを低減するための基本的な考え方は、(1)入力や表示として複数の(代替)手段を提供する、(2)設定条件を可変にする(ユーザカスタマイズ)、(3)ユーザの環境を限定しない、(4)正しいHTML文法で記述する(W3Cで廃棄予定や推奨していない技術を使用しない)の4点である。Webページの新規作成や更新時などのタイミングで対応可能なところから、かつ防災情報など優先度の高いところから対応するのが現実的である。

まず、現行のWebサイトの問題点を明確にすることが重要である。Webページ上の画像を表示しない設定にしても情報が伝えられているか、マウスを使用せずキーボードだけでWebページ内の操作ができるか、など簡単なチェックからWebサイトのアクセシビリティの度合いを試してみて欲しい。

また、Webサイトの担当者が一からウェブ・アクセシビリティを勉強するのではなく、既に公開されているWebガイドライン(例:富士通ウェブ・アクセシビリティ指針)を参照し、問題点やその対応方法を学び、自らのWebサイトに適用するのも効果的である。

また、作成したWebサイトは公開前にアクセシビリティとユーザビリティのチェックのために、是非ユーザ評価を行なって欲しい。アンケートやヒアリングに加え、様々なユーザに実際にアクセスしてもらい、その様子を行動観察やプロトコル解析することで、よりわかりやすくアクセスしやすいWebサイトにすることができる。

近未来の電子自治体においては、いろいろな場所に設置された公共端末から自治体のポータルサイトに誰でもが容易にアクセスできることが求められる。そのためには、多様な身体特性、設置環境などに配慮したアクセシビリティ対応が不可欠である。利用者が求める情報やサービスをその人に適した形態で提供するためには、人を中心に考える、ヒューマンセンタードデザインが大切になる。

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e. 発表:『ウェブヘルパー及び総務省実証実験のご紹介』

発表者: 実証実験事務局

総務省が取り組んでいる「高齢者、障害者等が利用しやすいホームページの普及に向けた支援システムの実証実験」について、支援システム(ウェブヘルパー)の概要やこれまでの取り組み成果について中間報告をしました。

発表内容(概要)

総務省では旧郵政省時代から、ウェブアクセシビリティに対する取り組みを行っている。平成11年「アクセジブルなウェブコンテンツの作成方法に関する指針」はIT戦略会議の資料としても公開されている。平成12年度にウェブアクセシビリティ支援システム(当時はJ-WAS、現在はウェブヘルパーと呼んでいる)の開発を進めた。これを使い、平成13年度から、ウェブアクセシビリティ実証実験を実施している。昨年度の実証実験は、WCAGに基づいて、ホームページのHTMLをチェックし、利用を通じてウェブアクセシビリティの普及・啓発に努めた。その取り組みは二つに分けられる。一つは、支援システムの開発と公開であり、サーバー版のシステムをASPで利用できる形で無料公開した。二つ目は、仙台、岡山、福岡で、サイト提供者の企業、自治体のウェブ担当者、利用者側として高齢者視覚障害者に協力してもらい、提供者と利用者の意見交換会など行った。地域が発信しているウェブのアクセシビリティ向上に努めている。

昨年度の実証実験では主要サイトのウェブアクセシビリティ変化も調べた。J-WASで自動的に点検できる範囲でどのくらいエラーが出るか、実施開始時と終了時で比較した。

今年度の取り組みは3つに分かれている。ASPで公開したウェブヘルパーのCD-ROM版の開発、全国でのセミナーの開催、アクセシブルサイトコンテストの実施である。

CD−ROM版とサーバー版との違いは、サーバー版はインターネットに公開しているコンテンツを点検するものであるが、CD−ROM版はさらにウェブ製作者側のローカルなHTMLファイルを点検することが可能で、サーバーにアップロードする前に点検できるようになっている。また、付加機能「ALTテキストエディタ」、「フォルダー一括簡易点検」機能、「文章構造チェック」がある。

ウェブアクセシビリティは、普及に関していくつか課題がある。例えば優れたアクセシビリティを持つページをアピールする場がなかなかない。また、アクセシブルなホームページを作成する際、製作者としてどう問題を解決して実現している例があるのか、参考になる例が少ない。そのような背景からアクセシブルコンテストを実施している。アクセシビリティに配慮し、さらに見た目にもより美しいとなどの事例をあげていく試みである。これには2つ部門がある。既存ホームページの部では、民間企業、公共または個人ページによって公開されているページで、アクセシビリティに配慮されているものを募集している。オリジナル作品の部では、クリエイターを対象に、「みんなのウェブ」の主要ページをアクセシビリティに優れたオリジナルページにしてもらうものである

「みんなのウェブ」という実証実験のページを公開し、ウェブアクセシビリティの確保に役立つ情報を載せているのでご覧いただきたい。

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f. パネルディスカッション

講師全員にお集まりいただき、セミナーに参加いただいた会場の皆さんと「電子自治体のウェブアクセシビリティを考える」というテーマについて、ディスカッションを行いました。

一つめのテーマ

飯塚氏: 限られた予算と工数のなかで、アクセシビリティガイドラインのすべての項目を満足するウェブサイトを構築するのは非常に難しいと思う。篠山市ではウェブサイトの構築にあたり、どのあたりから取組もうと考えたのか、対応すべきアクセシビリティ項目の優先順位やウェブサイト構築の際の基本的な考え方をお聞きしたい。

植村氏: アクセスビリティなどいくつかの、みんなが守らねばならないことを、あげている。デザインのモデルとなるページ、10くらいのサンプルページを作っている。

二つめのテーマ

会場: ウェブサイトのアクセシビリティを考えていくときに大切なことは、行政がウェブサイトはどうあるべきかを検討する公開の場を作り、住民と一緒に考えていくべきだと思う。今後の進め方として、住民と一緒にやろうとする動きはあるのか。

植村氏: もともと市民を対象としたページになっていなかったが、市民の立場を重視して、住民が参加できるページが徐々にできつつある。市が半分出資し、残りを120名の個人が出資した篠山にまちづくり株式会社というものがあり、自分たちの情報発信を行うことを目的としている。このなかで自分たちの情報を市のホームページに連動できないかと模索している。

三つめのテーマ

会場: ITのバブルもはじけ、IT関連業界では非常に失業率が高くなっている。公的機関が自らウェブサイトを構築するのではなく民間企業にできることは民間にやらせてほしい。市役所の職員が手作りしたからといって必ずしもコストが安くなることにならないのではないか。なぜ、手作りになったのか、その経緯を聞かせて欲しい。また、ウェブサイト構築に当たって市民の要望は何かあったのか。

植村氏: 当初は業者にお願いしようとしたが、業者に手作りだと見栄えが悪いといわれ、発憤して職員がつくった。職員は自分のしている仕事について情報発信する義務があると思う。発信すべき情報がないというのは、仕事が実はないのではないか。市民に向かって出す情報を一つの手段としてホームページに出していく。職員の情報発信にこだわっている。ただ、自治体ごとに民間の活用など工夫があっていいと思う。

林氏: 住民の意識がそれぞれ違うので難しい。「自分のためではなく、地域のため。」という意識を持って欲しい。一つの目的に向かって理解できる範囲で、普段の努力が必要ではないか。

会場: 雇用について、障害者にウェブサイトをつくる仕事が積極的に割り振られるのか、違うところに仕事が割り振られる傾向にあるか。

濱田氏: 当社でも障害者の登録社員を抱えているが、作成の仕事はあまりない。アドバイスや作る人に教える仕事が多い。アドバイスに基づいて作成されたページが、担当者の更新作業によってひどく非アクセシブルになっていってしまうことが多々ある。誰でも更新できるようにしなければ続いていかない。ツールのできる範囲内でアクセシビリティはどうするかということ。最後の問題はやはりやる人間。勉強していただければと思う。

四つめのテーマ

会場: ウェブサイトをアクセシブルにするために、ソフトウェアとしてはどこまでやるべきなのか。

飯塚氏: ご質問の「ソフトウェア」の定義が明らかでないが、ウェブサイトにアクセスするには、OS、ブラウザ、ウェブを作成するためのツール、ユーザー側の持つアクセシビリティ専用ソフトなど、いろいろなソフトウェアが関わっている。ユーザーの自助努力だけで解決すべきいうのは現実的でないし、メーカーの努力不足と言っても問題の解決にならない。米国リハビリテーション法508条の影響などもあり、OS、ブラウザ、Flash、PDFなど、従来、障害者対応が必ずしも十分でなかった技術も徐々にはあるがアクセシビリティ対応されつつある。ただし、現状では、それらの対応ですべて解決とはいかないので、ユーザー側での工夫や努力も必要になる。ウェブサイトのコンテンツ作成においては標準の技術を使い、目立たせるためだけの技術や文法規則に準拠しないものを使わないのが大切であることはいうまでもない。

杉田氏: 自治体の職員などがウェブアクセシビリティに理解がないというのは、私も感じる。視覚障害者がウェブを使う上での制限は多いと思う。PDFも、一部の音声ソフトで読み上げられるが、それをもってすべての視覚障害者が使えるようになったとみられがちになる。様々なスクリーンリーダーを使っている視覚障害者がいる中で、一つのスクリーンリーダーがPDFに対応したからといって、誰もが利用できるようになったとは言えないことに注意したい。障害者でもパソコンに慣れていない人も多く、使っている人の中で十分な操作ができる人は一部だと思う。そのため、障害があっても、どのような状況にあっても、アクセスできる手段を講じなければならない。私は技術の問題よりも、自治体側がアクセシブルなサイトに理解を示し、研修や教育をする努力をすべきだと思う。

五つめのテーマ

会場: わかりやすいウェブサイトを作るには、頭で考えているだけでは駄目でユーザーによるテストが重要である。ユーザビリティテストは、ウェブサイトを作成した当事者だけで行なうのではなく、インターネット技術に必ずしも詳しくない一般の人にも使ってもらい試すべきだと考える。また、アクセシビリティの基本は、どういう情報提供をするのかが一番大切ではないか。行政側からの視点で発信も大事だが、本当に市民の視点での情報発信を考えることが必要だと考える。ウェブサイトのアクセシビリティ向上には、何か決まったやり方があると思われている。しかし、実際はケースバイケースで決めていると思う。

六つめのテーマ

会場: 私の会社がやっている事業が参考になるのでは。まず電話を使った音声情報を行っている。現在、開発中のプロジェクトとして、VXML技術を用いホームページに入力をして音声情報を更新するという仕組をつくっている。また、視覚障害者向きに、電話とホームページをリンクさせたリアルタイムの音声掲示板を作っている。ウェブだけでなく、電話など、従来から使われているもので、コストもかからない、誰でも使える、さまざまなメディアを使うことで、アクセシビリティが広がると思う。

七つめのテーマ

会場: ウェブサイトのアクセシビリティを向上させるのは良いことだが、一番問題なのはコストがかかることではないか。アクセシビリティをよくすれば、本当に今まで使っていなかった人が使ってくれると言えるのだろうか。

会場: まずコストを問題にするのでなく、基本的な知識として知ってもらって、少しずつアクセシビリティを浸透させてほしいと思う。

杉田氏: 大阪府立図書館では、障害者に対するサービスを30年近く行っている。確かに、障害者へのサービスは、個人へのサービスであり、コストパフォーマンスは悪い。だが、今まで情報から阻害されていた障害者が、それによって情報を獲得できる。ウェブの場合も、今までアクセスできず、人の手を借りなければ出来なかったことが、自らできるということは、非常に大きなことだと思う。アクセシビリティと一般のユーザーとの調和は基本的にはできると思う。また、それは制作者側の意識の問題で、アクセシブルなサイト作りをすれば障害者は利用してくれると思う。

濱田氏: コストがかかるというが、完全にやろうとすればコストはかかる。だが、もし最低限の配慮についてコストがかかると言うのであれば怠慢である。業者は、差別化を図っているので、アクセシビリティに対応していると仕事が取れる。実際にはコストはそれほどかからないと思う。「本当に使っているのか」ということについては、反応がなくてわからない。障害者は、悪い例にクレームを付けるだけでなく、良い例に出会ったら担当者を誉めてほしい。それによって、アクセシビリティが向上するのではないだろうか。

八つめのテーマ

会場: 公共図書館のアクセシビリティについて調査された件で、調査された側の図書館の反応はどうなのか。また、同調査について公開する予定はあるのか。

杉田氏: 図書館の調査については、今後何らかの形で、図書館側に発表していく。障害者も、自治体、図書館のホームページを利用してもらいたい。今後、私も積極的に働きかけていきたい。

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