ページの先頭: ナビゲーションをスキップ

現在の位置:

トップページ > 総務省実証実験について > 

本文はじめ: 本文を飛ばす

視覚障害者のインターネット利用特性と問題分析

この資料について:

実証実験を通じて、視覚障害者の方々から交流会やアンケートなどにより頂いたご意見を基に、事務局なりにまとめたレポートです。

以下に、レポート(プレゼンテーション資料)からテキスト部分を抜粋したものを掲載しています。

 → オリジナルのレポート(プレゼンテーション資料、PDF:200KB)はこちらから

この資料は全部で8章だてですが、第3章と第6章、第7章はその中がまたいくつかのピックスに分けられています。

目次おわり:

a. 全盲利用者のウェブ利用の特徴

特定のウェブサイトから欲しい情報を取得する作業のプロセスを、全盲の視覚障害者と健常者とで比較すると、全盲の利用者の方が、ウェブサイトやページにおける構造の把握や確認のための作業が非常に多いことがわかる。

目次に戻る(x) 


b. 全盲利用者の情報取得の特徴

  • 全盲利用者は、主に音声読み上げソフト(音声読み上げブラウザやスクリーン・リーダー)を用い、 HTMLのテキスト部分を音声化してインターネットを利用している。
  • 全盲利用者がインターネットから情報取得する際に、サイトの理解、ページの理解、情報の理解の順に、繰り返し内容の把握や確認を行いながら、操作を進めている。
    サイトのトップページを表示する(サイトの理解)
    (1) 一目でトップページの全体像を判断することができないので、まずは自分の目的とするサイトかどうか、どのような内容・機能のサイトかを把握する。
    欲しい情報のありそうなリンクをクリック又はページを検索する(サイトの理解)
    (2). 欲しい情報があるページに効率的に辿りつくために、リンクを辿ればいいのか、キーワード検索が使えるのかを検討する。
    (3). トップページから、どのページに飛べば欲しい情報がありそうかを検討する。
    欲しい情報があるページかどうか判断する(ページの理解)
    (4). ページの内容を一目で判断することができないので、目的の情報があるページにアクセスできたのかを確認する。
    (5). 広告やメニューを読み飛ばし、ページの中で、目的の情報がある位置に早くたどりつけるようにする。
    (6). 欲しい情報がページ内にあったかどうかを確認する。
    欲しい情報の内容を理解する(情報の理解)
    (7). 画像などの非テキストコンテンツの内容や、視覚的なデザイン、レイアウトを正しく理解しようとする。

目次に戻る(x) 


c. 全盲利用者の情報取得において問題となる事柄

1 サイトのトップページを表示する

(1) 一目でトップページの全体像を判断することができないので、まずは自分の目的とするサイトかどうか、どのような内容・機能のサイトかを把握する。

初めて訪れるサイトでは、トップページをひととおり読み上げ、ページの内容や、サイトの機能(サイト内検索ができるか等)、サイト全体の構造を把握する。この際以下のような問題が発生する。

  • フレームに対応していない音声読み上げソフトでは、フレームのページを別々にしか読めないため、構造が理解しにくい上、操作が困難となる。
  • 広告などが自動的に別の子ウィンドウで表示されると、操作できるアクティブなページが子ウィンドウに移ってしまい、操作が困難となる。
  • 各フレームにタイトル名が入っていないため、フレームの内容がわからず、どのフレームに飛べばよいのかわからない
  • トップページのメニューリンク数があまりに多いと、全体像を把握するのに膨大な時間を要する。
  • 1ページ内の情報量が多いと、自分がページのどこにいるかわかりにくい。
  • テーブルでレイアウトをしているページの場合、情報構成上の順序と読み上げる順序とに矛盾が生じると、理解が困難な場合がある。

2 欲しい情報のありそうなリンクをクリック又はページを検索する

(2) 欲しい情報があるページに効率的に辿りつくために、リンクを辿ればいいのか、キーワード検索が使えるのかを検討する。

リンクを辿るよりも、キーワードによるサイト内検索を行う傾向があるので、検索ボックスの位置を探す。この際以下のような問題が発生する。

  • 漢字での入力が難しいことが多いため、正しいキーワードを入力することが難しく、正しい検索結果を得ることが困難となる。
  • 検索機能を備えていても、ページ左上等に配置されていて初めの方に読み上げられないと、機能の存在に気づかず活用できないことがある。
  • サイト内の情報を検索したい際、検索機能を備えていても、それがWeb検索になっていると、他のサイトに飛んでしまい、目的とする情報の取得が困難となる。

(3) トップページから、どのページに飛べば欲しい情報がありそうかを検討する。

何度か訪れたことのあるサイトでは、ページの全体を読み上げるのではなく、リンクだけを読み上げ、リンクの文章を頼りに欲しい情報を探す。この際以下のような問題が発生する。

  • リンクが画像になっている場合に、代替テキストがないと、画像のURLが読み上げられてしまい、どのようなリンク先か理解できない。
  • トップページのメニューリンクが画像で代替テキストがないと、メニューの内容を理解できない。
  • リンクを示す文章に、視覚的な表現(左のリンク、ここのリンク等)が用いられていると理解しにくい。
  • リンクが画像になっている場合に、代替テキストがClick Here!になっていると、何のリンクかわからない。

3 欲しい情報があるページかどうか判断する

(4) ページの内容を一目で判断することができないので、目的の情報があるページにアクセスできたのかを確認する。

あるページにアクセスした際、はじめに読み上げられるページタイトルを聞いて、ページの内容を確認する。この際以下のような問題が発生する。

  • どのページにも同じタイトル名が入っていると、何のページにいるのか瞬時に判断できない。

(5) 広告やメニューを読み飛ばし、ページの中で、目的の情報がある位置に早くたどりつけるようにする。

ページ内で、目的とする情報に早くたどりつくために、キーボードのtabキーでリンクを移動したり、音声読み上げソフトのリンク読み、見出し読み、早送り機能等を使って不必要な部分を飛ばし読みする。この際以下のような問題が発生する。

  • ページ上部やページ左側などにナビゲーションリンクがたくさんあり、読み上げではなかなか欲しい情報(ページ本文)にたどり着けないサイトが多い。
  • 検索機能で検索しても、結果が表示される前にメニューが多く、わかりにくい。
  • ページが変わっても同じリンクを読み上げることになる場合が多いので、自分の操作でページが切り替えられたのかどうか認識しにくい。

(6) 欲しい情報がページ内にあったかどうかを確認する。

目的とする情報が探せなかった場合は、何度もメニューと各ページを行き来しながら情報を探す。この際以下のような問題が発生する。

  • トップへ戻るためのボタンがないページがある。

4 欲しい情報の内容を理解する

(7) 欲しい情報の内容を理解する

音声では正しい情報が得られなかった場合は、理解できる形に頭の中で変換したり、情報加工する。この際以下のような問題が発生する。

  • 画像に代替テキストがないと、画像があること自体理解できない。
  • 文字が画像になっている場合、代替テキストがないと内容を理解できない。
  • 画像が多いページでは、どのような画像なのか、解説が欲しくなる。
  • 音声読み上げソフトはFlash等には対応していないため、ページやメニュー全体にFlash等を活用したページでは、どのような情報があるか理解できない。
  • リンク先がPDFのみの情報提供の場合、音声読み上げソフトでは読めないことが多い。
  • PDFファイルへリンクしていることが予告されていないでリンクに飛んだ場合、音声読み上げソフトのユーザは、エラーが起きてページを読み上げていないかもしれないと感じる。
  • 英語やアルファベットを多用したページは、内容を理解しにくい。
  • レイアウト目的で文字間全てにスペースを入れている場合があるが、(例:文 章 表 現 等)一文字一文字読み上げてしまい、単語としての意味を理解するのに時間がかかる。
  • 重要な情報をアンダーラインや色等で強調してあっても、わからない。
  • データテーブルでセルを結合してあると、意味がわからないことがある。

目次に戻る(x) 


d. 全盲利用者のウェブアクセシビリティ確保のポイント

  • 実証実験で見られた問題点について、解決の方法をWCAG1.0のチェック項目と対比させると、「4.欲しい情報の内容を理解する」際に問題となる、代替手段の提供への配慮に関して、優先度が高くなっている。
  • 全盲利用者が正しく情報取得をするには、情報自体の理解以前に、サイトやページの理解が必要となる。従って、WCAG1.0の優先度は低いものの、1〜3で問題となる検索の使いやすさやナビゲーションの分かりやすさ等への配慮も重要である。

これまで見てきた各段階の問題に対して、以下のような解決の方向性が考えられる。なお括弧内の数字はWCAG1.0のチェックポイントと優先度を示している。

1 サイトのトップページを表示する(サイトの理解)

  • フレームにはタイトルや説明をつけ、わかりやすくする 【12.1(優1)・12.2(優2)】
  • むやみに新しいウィンドウを開いて表示しない【10.1(優2)】
  • トップページの情報量やリンクの数を、できるだけ少なくする【13.8(優3)】
  • テーブルは、読み上げソフトでも意味が通じるような順に記述する【5.3(優2)】

2 欲しい情報のありそうなリンクをクリック又はページを検索する(サイトの理解)

  • リンク画像には代替テキストをいれる【1.1(優1)】
  • リンクテキストには視覚的な表現を使わない【13.1(優2)】
  • 検索機能がある場合は、ユーザーのスキルと好みに合わせて異なるタイプの検索ができるようにする。【13.7(優3)】
  • 検索ボックスはページの左上に置く【なし】
  • サイト内に置く検索ボックスは、サイト内が検索できる機能とする【なし】

3 欲しい情報があるページかどうか判断する(ページの理解)

  • 各ページには内容がわかるようなタイトルを入れる【13.2(優2)】
  • ナビゲーションリンクや広告は、読み飛ばせるように、隠しリンクを入れる【13.6(優3)】
  • 各ページに、トップへ戻るボタンをつける【13.4(優2)・13.5(優3)】

4 欲しい情報の内容を理解する(情報の理解)

  • 画像には代替テキストをつける【1.1(優1)】
  • PDF以外のファイル形式でも情報提供を行う【11.3(優先度3)】
  • Flashページ以外に、HTMLのページも用意する。【11.4(優先度1)】
  • わかりやすい日本語で表現する【14.1(優1)】
  • 一単語内にスペースを入れない【14.1(優1)】
  • 強調する時は、視覚的な表現でなく、構造的な強調を行うタグを使う【3.3(優2)】
  • データテーブルでは、縦列と横列の意味が正しく理解できるようにする【5.1(優1)】

目次に戻る(x) 


e. 弱視の視覚障害者の特徴

  • ひと口に弱視と言っても、障害の状況により「見え方」や「見えやすい条件」に多様な個人差がある。
  • ウェブサイトの利用を考えた場合、障害の状況やウェブコンテンツの特性等によって利用方法も複数あり、全盲の利用者に比べ利用の際に問題になる事柄も個人差が大きい。
弱視の視覚障害者の障害の例
  • 視力がでない
  • 形がぼやける、ゆがむ
  • 色の違いが分かりにくい
  • まぶしい
  • 視野が狭い
  • 真ん中が見えにくい等

したがって弱視の視覚障害者のウェブサイト利用については、以下のことが言えるだろう。

  • 障害の状況等により複数のウェブサイト利用方法がある。
  • 全盲の利用者に比べウェブ利用の際に問題になる事柄も個人差が大きい

目次に戻る(x) 


f. 弱視の視覚障害者のウェブ利用方法

1 主要な利用方法の整理

弱視の視覚障害者のウェブ利用方法は、大きく分類すると以下の4つが挙げられる。

パソコンやブラウザ、ユーザースタイルシートの設定で、配色、文字サイズ等を変更する
パソコンやブラウザの設定で、文字サイズを常に拡大表示したり、配色も視認しやすい黒字に白文字など、各自の状況に合わせて設定する。また、ブラウザのユーザ補助で、ユーザースタイルシートを設定する方法もある。
画面拡大ソフトを利用する
ブラウザ等は一般の設定のまま、画面に表示される画像や文字を拡大表示するソフトを利用し、見えにくい箇所を拡大表示する。
拡大レンズを画面にあてて物理的に拡大する
画面の表示だけでは見えにくい箇所に、写真用の拡大レンズや接眼レンズなどを直接ディスプレイにあてて、画面を物理的に拡大して見る。
音声読み上げソフトを利用する
障害の程度や表示される情報の種類によっては、音声読み上げソフトを利用するケースもある。

障害の状況や、情報取得のための必要性に応じて、これらの方法を組み合わせて利用することが多い。

2 障害の状況による利用方法選択の違い

  • 視覚での利用がある程度可能な場合と、視覚での利用が相当困難な場合とでは、基本となる利用方法が異なってくる。
  • 以下に両者の情報取得スタイルの一例を挙げるが、実際には個人の障害の状況やハード環境・ソフト環境等により多様なパターンで利用されていると考えられる。

(1) 視覚での利用がある程度可能な場合

  • 基本的には、パソコンやブラウザ等の設定を調整し利用する
  • 特定の情報(テキスト・画像)を詳しく確認したい場合などには、拡大ソフトまたは拡大レンズを利用する。
  • 大量の長文を読み流したいときなどには、音声読み上げで利用する。

(2) 視覚での利用が相当困難な場合

  • 基本的には、音声読み上げで利用する。
  • 特定の画像内容を視覚で確認したい場合などには、拡大ソフトまたは拡大レンズを利用する。

目次に戻る(x) 


g. 弱視の視覚障害者のウェブ利用の問題点

1 視覚的に利用する場合のタスク

  • 本資料では、実証実験で多くの協力が得られた“視覚でのウェブ利用がある程度可能な弱視障害者”が視覚的にウェブを利用する際の特徴を整理する。なお、“視覚での利用が相当困難な場合”については、前ページの通り音声読み上げを中心に利用することが想定される。そのため、全盲利用者に比較的に通った利用特性であると考えられる。
  • このような弱視の利用者の場合、「サイトに見合った設定」作業、「構造と機能の把握」作業、「情報内容の読みとりと利用」作業を通じてウェブサイトが利用される。

まずウェブサイトのどんなページを見るときにも、次の利用の準備が必要である。それから、トップページの場合、各ページの場合それぞれ以下のタスクが存在する。

(1) 利用の準備

そのサイトに見合ったブラウザ等の設定調整
自分のパソコンやブラウザ等の設定がそのページの表示に相応しいかどうかを確認し、適さない場合は調整する

(2) トップページの場合

構造と機能の把握
-トップページ構造の把握(レイアウトの大まかな把握)
-自分の必要としている機能の位置把握(メニューはどこか、検索はあるか、What's Newはどこか)
情報の内容の読みとりと利用
-文章や画像内容の読みとり
-リンクの選択など

(3) 各ページの場合

構造と機能の把握
-ページ内の情報構成の把握(自分の必要としている情報はページ内のどこにあるか)
情報の内容の読みとりと利用
-文章や画像内容の読みとり
-リンクの選択など

2 視覚的にウェブから情報を取得する場合の基本パターン

  1. 具体的には、「構造と機能の把握」作業によって欲しい情報の位置を大まかにあたりをつけ、あたりをつけた箇所をブラウザ設定変更や、拡大表示ソフト・レンズ等の利用により拡大し「情報内容の読みとりと利用」を行う。
  2. 拡大したものが欲しい情報ではなかったり、拡大したことによりレイアウトが崩れ、どこをどのように拡大したのか分からなくなってしまった場合などは、もう一度縮小表示をし「構造と機能の把握」作業に戻ってレイアウトを確認する。
  3. この拡大(1)⇔縮小作業(2)の繰り返しによって利用されることが多い。

目次に戻る(x) 


h. 弱視の視覚障害者のウェブ利用の問題点

前項と同様に、実証実験の協力者に多かった“視覚でのウェブ利用がある程度可能な弱視障害者”が視覚的にウェブを利用する場合の問題点を以下に整理する。

1 そのサイトに見合ったブラウザ等の設定

配色設定等の変更によるコントラスト調整や、ブラウザ等の設定変更による文字サイズの拡大縮小などがユーザー環境で自在に行えない場合、円滑にサイトから情報を得ることが難しくなる

2 構造と機能の把握

レイアウト構成
ページ内の情報レイアウトが複雑だと、拡大⇔縮小を繰り返した場合に、欲しい情報の位置を把握・特定するのが難しい
トップページでの機能の配置
トップページでは「メニュー」、「What’New」 、 「サイトマップ」など重要な情報がページ上部やページ左側など分かりやすく配置されていないと、情報に到達するのに時間がかかる。
簡便に情報にたどり着くためには、ページ内のフリーワード検索機能があれば、リンクを辿らずに検索機能を利用したいが、検索ボックスがトップページ左上など目立つ箇所にないと、存在に気づかず利用できない。
ページ内の情報量
一つのページ内の情報量が膨大だと、その中から必要な情報の位置を特定するのが難しい

3 情報の内容の読みとりと利用

画像情報
テキスト情報が画像で表現されている場合、ブラウザ等の設定変更だけでは拡大できず、レンズでの拡大、拡大表示ソフトの利用など他の方法と併用しなくてはならない
特にリンクメニューなど重要な情報・頻繁に利用する機能が小さな画像で表現されている場合は、円滑にサイトを利用することが出来ない
リンクテキスト
マウスの動作状況を正確に目で追うことが難しいため、リンクテキストが複数並んでいる場合にリンクとリンクの間が詰まっていると、必要なリンクを間違わずに選択することが難しい

目次に戻る(x) 


本文おわり:

「総務省実証実験について」に戻る(y)


ページの先頭に戻る(z) 


奥付:
(c) 2001-2003 by ウェブアクセシビリティ実証実験事務局,
by (C)情報通信研究機構 バリアフリーサイト, all rights reserved. barrierfree@nict.go.jp
ページおわり: ページの先頭に戻る